2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代における映像表現と活字文化・文学の重層的な相関を対象とする研究
Project/Area Number |
14510457
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 昭彦 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80261254)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城殿 智行 大妻女子大学, 短期大学部・国文科, 専任講師 (00341925)
十重田 裕一 早稲田大学, 文学部, 助教授 (40237053)
紅野 謙介 日本大学, 文理学部, 教授 (20195671)
|
Keywords | 映像表象 / 言語表象 / メディア / 大衆文化 |
Research Abstract |
二年間の研究期間の一年目にあたる本年度は、次年度における研究内容の総合化を前提に、研究代表者および分担者が以下の個別的な研究を行った。 1、絵画表現から映像表現への史的展開を究明ことを目的とする、明治期・大正期の絵画・映像に関する資料収集と分析。この領域での研究により、絵画表現が芸術として認知されるようになるに従って、法的、社会的な規制が、たとえばヌードなどの表現に強い影響を与えるようになるのに対して、大正前半期までは風俗的な取り締まりの対象とされる映像表現には強い規制がはたらかず、題材、表現技法の面で欧米のものとの交流関係を維持しながら、大胆な実験が試みられたことが明らかになった。 2、活字文化および文学と映像表現との諸関係の究明をめざす、大正・昭和期の出版状況、大衆文化状況およびシナリオと映像表現に関する重層的な分析と資料収集。この領域では、「文芸春秋」や「キング」などの雑誌の興隆が、読者参加型の出版形態を大衆化するにつれて、文学者の側の対読者意識が変質し、川端康成や横光利一などにみられるように、大衆向けメディアとしての映像表現の創造に関与する活動が活発化し、映像に即したシナリオ文学が本格的に形成される一方で、それが小説の時空間の表現などの表現技法に利用されてゆく様態が具体的に究明された。 3、映像表現の原理的性質に関する究明。映像表現の限界の探求と、その変革をめざしたフランス・ヌーヴェルヴアーグの作家の作品分析を行うことで、それ以前の世界的な規模での映像表現にいかなる反省的な意識が芽生え、その限界の打開が試みられたかを探ることにより、巨視的な視野から、日本でそれ以前に試みられた種々の実験的な映像表現の位置づける上での基礎的な知見が得られた。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 中山昭彦: "隠すことの顕れ-裸体画論争と文学"国文学 解釈と教材の研究. 47巻9号. 16-20 (2002)
-
[Publications] 十重田裕一: "出発期「文芸春秋」のメディア戦略"日本近代文学. 66集. 185-201 (2002)
-
[Publications] 十重田裕一: "新感覚派の光と影"文学. 3巻6号. 123-132 (2002)
-
[Publications] 十重田裕一: "出版メディアと作家の新時代"文学. 3巻8号. 35-51 (2003)
-
[Publications] 城殿智行: "生きるべきか死ぬべきか"ユリイカ. 34巻7号. 196-204 (2002)
-
[Publications] 紅野謙介: "投機としての文学-活字・懸賞・メディア"新曜社. 410 (2003)