2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510463
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
朝倉 尚 広島大学, 総合科学部, 教授 (80033231)
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Keywords | 義堂周信 / 空華集 / 義堂和尚語録 / 新撰貞和集 / 重刊貞和集 / 空華日用工夫略集 / 禅的発想 / 博引旁証 |
Research Abstract |
外来文化としての禅文化が、日本化して普及した「隆盛」期において中心的役割を果たした義堂周信(1325-88)の文筆活動の内実を解明するために、まずは基礎的な作業として、義堂の著作物・作品集を一覧表化してその所在と保存状態を確認した上で、収集可能なものについて複写・入手するという作業を三年間を費やして遂行した。最終年の本年は、図書館や文庫、さらには禅院の塔頭に出かけて、未見や要再調査の諸本を披見、収集し、大略所期の目的を果たすことができた。一方、諸本の整理、検討にも着手し、その成果は、広島大学国語国文学会における公開講演(平成16年11月28日)や別掲の雑誌論文に発表した。 作品集『空華集』については、五山版と元禄版との比較を試みてその特質を究めようとした。両版は部類構成を異にするために大異同が存在するように見えたが、内実は、作品の出入りは若干篇に過ぎず、作品配列もそれなりに類似性を指摘し得る。一言で言えば、元禄版は実用性を最優先して五山版を再構成している。五山文学全集本は大略元禄版に準処している。 五山版の『新撰貞和集』については、「盗刊」の書として、義堂自身が不本意であることを表明している。そこで『新撰貞和集』と『重刊貞和集』の編纂・刊行の経緯を、日録『空華日用工夫略集』を利用することによって解明することを試みた。義堂の「貞和集」刊行に対する執着は、青年時に渡明を果たすことにより自己の存在を証するという当世の風潮に対し、病身であったことが最大の理由であるが、そのことを果たし得なかったことに対する、義堂なりの解決法であったためであると推論した。この論証のためには、成簣堂文庫所蔵の物先周格の手沢本『新撰貞和集』が有効であろう。
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