2002 Fiscal Year Annual Research Report
馬籠・藤村記念館に見る個人文学館の在り方と藤村文芸の風土的考察に関わる研究
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14510468
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Research Institution | Edogawa University |
Principal Investigator |
新井 正彦 江戸川大学, 社会学部, 助教授 (10232026)
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Keywords | 風土 / 郷土作家 / 個人文学館 / 島崎藤村 / 藤村記念館 |
Research Abstract |
本研究は、島崎藤村をケーススタディとして、郷土作家と郷土の風土的考察を踏まえ、藤村記念館及び地域住民が郷土の生んだ文豪・島崎藤村をどう捉えているかを実態調査し、各地の文学館の実情と比較しつつ、個人文学館の必要性、役割、その施設の使命の考察とともに個人文学館の在り方の本質を実証的に調査論及するものである。 わが国の近代文学において、郷土に根差した作家、また故郷をモチーフにして成立した文芸作品は多い。その代表的文学者として島崎藤村を挙げることが出来る。藤村の生地・馬籠を訪れると、『夜明け前』や『家』『嵐』で描かれた自然はもちろん、旧宿場も復元されていて、作品の舞台そのままを体験できる。その中心に藤村記念館があり、作家・島崎藤村と『夜明け前』等の作品が丁寧に解説され、来館者は作家を身近に感じ作品の世界に魅了される。若者の活字離れが叫ばれ、郷土作家への地元住民の関心の無さ、知識不足、また文学館と地域社会との連携の希薄さが問題視されている現在、馬籠の藤村記念館は毎年企画展を開催してマンネリ化を解消し、地元と密着した文学散歩、読書会、文学講座等を積極的に実施して入場者数も年間10万人を維持している。これは、現在各地の文学館の入場者数が減少傾向を示す厳しい現状の中で、驚くべき数字である。それは、文学館の持つ基本的理念である藤村の遺した貴重な資料保管・展示というものに拠るだけでなく、記念館が旧本陣の藤村生誕の地に建ち、町並みが往時のまま保存されているといった複合的な環境にも拠る。しかし、記念館の努力とそれを取り巻く木曾馬籠の地元の人々の理解と賛同あっての保存継承である。山深い木曾馬籠にある藤村記念館の存在は、個人文学館のあるべき姿を具現している。
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