2002 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀イギリスにおける性的倒錯とその文学的表象についての研究
Project/Area Number |
14510508
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
宮崎 かすみ 横浜国立大学, 教育人間科学部, 助教授 (10255200)
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Keywords | 同性愛 / 変質論 / 人種 / セクシュアリティ / 世紀末 / 夏目漱石 / キプリング / 性倒錯 |
Research Abstract |
平成14年度は初年度ということで、特に基礎文献の収集・購入に努め、ペイター著作集、ワイルド著作集、ヴァージニア・ウルフの日記・書簡集・アディントン・シモンズの書簡集等、絶版になっていて入手しにくい図書を揃えることができた。これらの資料を読み込んでゆき、ペイターからワイルド、シモンズ、ウルフへと至る、同性愛の文学表現様式の展開と確立を跡付けてゆくことが、次年度以降の課題となった。 今年度に進行した研究としては、キプリングの『消えた光』を分析して、世紀転換期における人種的ディジュネレーションの思潮がセクシュアリティ、ジェンダー関係、性的倒錯などを通して表現されていたことを明らかにし、これを「変質のイングランドと再生の帝国-『消えた光』におけるジェンダー・ポリティクスとしてまとめた。この論考は『ラディヤード・キプリング』として松柏社から2003年5月に刊行される書籍に掲載される。この研究を通して、同性愛表現の様式とフランス文学・文化との影響関係の重要性を認識することになり、現在フランス文学についても視野を広げて研究を継続しているところである。また、文学的性表象が絵画表象とも深く関わっていたことについても認識を深め、絵画表象との関係についても研究課題として取り込むことになった。 3月下旬こかけて行った、イギリス、フランス、イタリアでの資料収集では、上記の点を踏まえ、文学テクストだけでなく、絵画資料の収集に努めた。現地での資料収集、とりわけ同時代の大量の絵画に一度に接することができ、当時の思潮を肌で感じることができ、当該研究のテーマの的確性を確信することができた。 さらに今年度は、英文学における同姓愛表象を夏目漱石の作品において反映されていることを読み取るという研究をして、これを「『門』におけるホモソーシャルな欲望-エロスの近代的編制と男たちの欲望の行方」という論考にまとめた。これは『文学』(岩波書店)の7・8月号、9・10月号に掲載される予定である。
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Research Products
(2 results)