2002 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀英国女性にみられる〈弱者〉との関係の文化史的研究-慈善と母子関係を中心に
Project/Area Number |
14510511
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 実佳 静岡大学, 人文学部, 助教授 (40297768)
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Keywords | 18世紀 / イギリス / 女性 / 文学 / 慈善 / 母子関係 / 日記 / 手紙 / ケア |
Research Abstract |
1.Countess Spencerの慈善について。彼女とMary Jacksonという人物の関係について、「18世紀英国の慈善活動とケアについて」という題目で、学内の「生命ケアの比較文化論」研究会(6月20日)で発表した。そこでは、手紙という媒介を通じて、相互の会話を促す文学的文化的知識の共有を土台にして、慈愛と感受性を重視する杜会現象に支えられて、裕福な貴族女性と困窮する女性の個人的関係が成立していることを指摘した。このテーマで雑誌論文として発表する準備を進めている。 2.慈善と売春婦について。18世紀半ばに、ロンドンで売春婦更正施設Magdalen House(Hopsital)が開設された。これに象徴されるように、売春婦は、ケアを与えられるべき対象となるのであるが、18世紀初めの性欲の化け物のような無法者や会話を楽しむ相手としての売春婦から、18世紀半ば以降の道徳と家庭の守護者としての女性像から取り残されて、人格を失って救われることのない売春婦へと変容していった。慈善施設関係の資料では、売春婦は杜会の腐敗の犠牲者であって、欠如を埋めて社会復帰を促すべき対象なのであるが、この施設が機能し始めるのと、売春婦たちの理想の女性像からの復帰不可能な脱落が明確化するのはほぼ同時期であるということになる。以上のような主旨で「18世紀の慈善と売春婦」の論文を「身体医文化論研究会」のワークショップ「腐敗と再生」(慶応義塾大学にて3月19日・20日開催予定)で発表する。 第二のテーマとして予定していた妊娠・出産・育児については、15年度以降に持ち越すことになるが、慈善と売春婦の論文で、慈愛に満ちた道徳と家庭の守り手としての女性像に注目したので、そこから繋いでいく。15年度は夏に大英図書館にてCountess Spencerのまだ手をつけていない資料を読んでリサーチを進めるが、その他に、情報を補充して上記二つの論文を完成させる。
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Research Products
(1 results)