2003 Fiscal Year Annual Research Report
改変の文法-ハーディ初期小説における脱エロス化された語り
Project/Area Number |
14510512
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上原 早苗 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 助教授 (00256025)
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Keywords | ハーディ / 本文概念 / 改変 / 検閲 / エロス / 脱エロス |
Research Abstract |
本研究はトマス・ハーディの初期小説に施された改変をたどり、その全容を解明することによって、初期小説に固有の改変の文法を明らかにすることを最終目的とする。平成15年度は『はるか群集を離れて』およぴ『貴婦人の物語』の改変研究を行う予定であったが、計画に修正を加えた。単に改変の軌跡を提示するだけでなく、本文批評における改変研究の位置やその射程を明確にしたほうが、本研究の意味・意義が明白になると考えたからである。よって本年度は本文批評の考察に時間を割いたが、具体的な研究内容は以下の通りである。 (1)本研究では版ごとに変わりゆくテクストの揺らぎに注目し、テクストを動的な生成体として捉えることによって、一つのテクストを特権化する従来の本文概念を問いに附すこととする。本年度は、ハーディのテクストを類型化し、(1)「正統」なテクストとは何か、(2)本文校訂に潜むパラドックスとは何か、(3)従来の本文概念の限界とは何か、(4)未定稿をどう位置付けるか、(5)改変研究によって拓かれる新しい地平とは何か、以上の5点について考察を加えた。現在は本年度の研究内容を論文として執筆中である(仮題「本文の類型」、日本ハーディ協会会報に投稿予定)。 (2)『はるか群集を離れて』の未定稿にあたって、改変をデータ化した。今年度の分析対象は草稿で、これまでのところ1/3の草稿の解読・分析が終了し、現在は改変の軌跡--語りの脱エロス化の軌跡--を効果的に提示するために、データをコンピュータ化している。 (3)昨年度の研究内容を論文としてまとめ、日本ハーディ協会会報に投稿・発表した(「盲目のクリム」『ハーディ研究(日本ハーディ協会会報)』第29号)。
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Research Products
(1 results)