2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510521
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉村 あき子 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (40252556)
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Keywords | メタ言語否定 / 一般的会話の含意 / メタ表示否定 / 真理条件的意味 / 真理関数演算子 / 否定の意味 / 認知語用論 / 関連性理論 |
Research Abstract |
平成16年度は、メタ概念的否定の中でもいわゆる「一般的会話の含意」を否定の対象とするものに焦点を当て、発話処理における位置付けを明らかにし、その研究過程で明らかになった自然言語の否定の意味、という非常に根本的なテーマに関する解答を示唆した。「一般的会話の含意」とは、特定の表現が現れると、特にブロックする要因が無い場合どのような文脈でも引き出される意味で、何らかの推論によって回復されることはほぼ意見の一致を見ているが、Neo-Grice派語用論の考え方と関連性理論の考え方が大きく異なる。Hornを含むNeo-Grice派語用論者は、これらの意味はnon-monotonicなデフォルト推論によって回復され、発話解釈において独自のレベルを構成するもので真理条件には貢献せず、否定は語用論的に多義であると主張する。一方、関連性理論ではこれらの意味はandやifなどの論理演算子の作成域に入ることから、命題内容に貢献する真理条件的なもので、否定はどのような場合においても統一的に真理関数的演算子であると主張する。「一般的会話の含意」の否定は前者の枠組みではメタ言語否定と見なされるが、後者では記述否定になる。 上記のような理論的分析と言語的分析が錯綜する状況の中で、日本語のデータも交えて関連性理論の命題内容形成の考え方を指示する証拠を提示し、HornとCarston両者の対立及びそれぞれの問題点は自然言語の否定の意味が何であるかに起因することを示した。Hornは、自然言語の否定は語用論的に多義であると主張するが、意味論的意味を真理関数的なものだと考えていない以上意味論的な多義性に通じる。Carstonは、メタ言語否定の本質は否定の作用域にメタ表示が含まれることであり、自然言語の否定は単義で、その意味は例外なく真理条件的であると主張するが、Givon(1978)の古典的分析が正しいのであれば、全ての否定がメタ言語否定になってしまう可能性があり、メタ言語否定の全ての否定対象を命題化しなければならないことが問題となる。どちらも、自然言語の否定の意味は論理演算子の否定であるという仮定を維持しようとするところにその原因があり、自然言語の否定は非常にgeneralな意味を持つと考えると解決されることを示した。
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Research Products
(1 results)