2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510526
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
木下 卓 愛媛大学, 法文学部, 教授 (00136293)
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Keywords | 自然 / イギリス・ロマン派 / 博物学 / 風景 / 帝国主義 |
Research Abstract |
18世紀のイギリスは理性と啓蒙の時代であるとともに「改良」(Improvement)の時代でもあった。農業生産力向上のための「囲い込み」、湿地帯の排水や森林の開墾による耕地の拡大と改良が国家的規模で進行していた。しかし「改良」はイギリス国内にとどまらず、海外の植民地の土地や栽培植物に対しても行われていた。このような背景において「自然」がどのように発見されたのかを明らかにし、風景の見方を修得していく過程を庭園文化(イギリス式風景庭園)の成立とそれを担った新興ブルジョワ階層の進取の気性や政治姿勢と関連させながらたどった。さらに、「自然」との関係において博物学という領域を考察しながら、それが「物を視線と言説の双方に結びつける新たな仕方」であり、この方法が動植物園や標本陳列館の展示を「表」(tableau)形式に置きかえるものであったことを論じた。そして、この博物学的空間においては視覚に特権的な作用が与えられたこと、この「まなざし」は大航海時代から数世紀にわたって編成されてヨーロッパ中のあらゆる階層の人々を巻き込んだファッションと化したこと、ヨーロッパを主体とするその「まなざし」は世界をまるで博物学の標本のように分類したということなどから、博物学と帝国主義が関連しあっていることに論究した。 また、風景の見方を修得して風景画というジャンルが成立した要因と背景が博物学の誕生と同質のものであったことを論じ、イギリス・ロマン派の文学や風景画における「自然」概念が帝国主義思想と複雑かつ密接に絡み合っていると結論づけた。 以上の研究によって得られた知見を学術論文にまとめた。
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Research Products
(1 results)