2004 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーションにおける関連性の保証についての実証的研究
Project/Area Number |
14510529
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大津 隆広 九州大学, 大学院・言語文化研究院, 助教授 (90253525)
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Keywords | 関連性理論 / 発話解釈 / 推論的意味拡充 / 認知効果 / 処理労力 / 会話の含意 / 表意 |
Research Abstract |
Griceがコミュニケーションを理性的に分析可能なものであり、かつそれが推論を伴う言語行動であると主張して以来、さまざまな側面からコミュニケーションにおける意味の問題について考察が行われてきた。しかし、Grice自身の関心は、発話の意味解釈の仕組みよりも、協調の原則と会話の公理を発話の意味に当てはめた含意の算出、さらには含意の分類にあったと言える。その証拠に、どのような方法で発話の含意が一つに解釈、決定されるのかという最も関心のある問題に適切な答えを用意していない。Levinsonは、一般化された会話の含意という特化した意味の側面について、含意とそれを導く推論をそれぞれQ/I/M含意、Q/I/M推論に分類した。しかし、Griceと同様に、直観的に認識するものを超えて、はるかに多くの言語現象を会話の含意に分類している。一方、社会規約を発話解釈の動機とするAustinやSearleの伝統的な発話行為論において、詳細に行われているのは発話行為の分類である。さらに、Bach and Harnishの発話行為スキーマは、伝統的な発話行為論に聞き手の推論過程を組み入れた形での発語内行為の分類と記述が考察の目的である。これらの多くの試みが発話解釈を認知的に妥当な形で説明できなかったのは、発話の意味の分類に重きが置かれ、いわばトップダウン的な視点から意味の問題に取り組んでいるからである。 これに対して、関連性理論が捉える発話の意味解釈の視点はボトムアップ的であると言える。関連性理論は、発話解釈に関わる意味のさまざまな段階をすべて考察の対象とし、発話により記号化された意味が表意、推意へと、語用論的推論によるオンライン作業をとおして復元され拡充される過程を丁寧に記述する。その記述は、発話の明示的意味(表意)と暗示的意味(推意)の明確な区別、仮説の構築と文脈想定の呼び出しによる意味解釈の仕組みに基づくものである。
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Research Products
(7 results)