2003 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀後半のイギリスにおける市(fair)の演劇と内乱期のパンフレット演劇
Project/Area Number |
14510534
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
南 隆太 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (60247575)
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Keywords | ドル-リー・レイン劇場 / 市(fair) / 勅許劇場 / ジョゼフ・アシュベリー / 初期近代イギリス演劇 |
Research Abstract |
イギリスの市(fair)における演劇研究を進めるにしたがって重要であると思われるようになるのは、王より勅許を受けた劇場・劇団と市への上演の双方において観客から俳優にいたるまで往還関係が見られることである。上演演目から演技に至るまでさまざまな交流行われるのだが、その中でも本年度はとくに興味深いと思われる劇場・劇団運営のあり方が双方の関係をどのように形作っていたかを、ドル-リー・レイン劇場を中心に同時代の劇場・劇団との関係を調査した。その結果明らかになったことは、17世紀後半以降の演劇においては俳優修行などの面においてアイルランドとのつながりが深く、俳優兼興行師であるジョセフ・アシュベリーの経営したダブリンのスモック・アレー劇場のように、ロンドンの劇団への登竜門的な存在として認知される劇場とそれを取り巻く環境があったことである。また劇団の再編成が繰り返されるに従って、俳優と経営者との関係が複雑化し劇場経営に投資家が参入するに至り、さまざまな対立が生まれたことである。俳優の過多あるいは不足といった状況も年によってはは起こっており、このような状況と市や地方の劇団・俳優との関係は、市とロンドン劇壇を考える際に見逃せない問題である。おそらくこのような状況下において最も顕著な例がピンキーと呼ばれた人気を博した俳優ピンケスマンであろう。ピンケスマンは市での成功をもとに勅許をもつ興行師と手を組み新しい勅許劇場において興行をおこなった稀有な俳優であり、このような俳優の存在が市と勅許劇場との関係を考える際の鍵となるといえよう。以上のような資料収集に基づく本年度の研究成果は「ドル-リー・レインの三頭政治:一八世紀初期ロンドンの劇場をめぐる政治学」として、2003年12月に出版予定の論文集に収録であったが、出版社の都合により変更となり、2004年夏に出版されることが決まっている。
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