2004 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国におけるアジア系アメリカ演劇の現状と今後の課題、可能性
Project/Area Number |
14510537
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
古木 圭子 京都学園大学, 経済学部, 助教授 (80259738)
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Keywords | セクシュアリティ / ジェンダー / 演劇における「仮面」の使用 / Theater Mu |
Research Abstract |
平成16年度は、14、15年度に引き続き、ニューヨークとロスアンゼルスで活躍する現劇集団の活動状況を中心に、アメリカ合衆国におけるアジア系アメリカ演劇の現状を調査した。しかし、特に今年中心として調査をしたのは、ミネアポリスを拠点として活躍する日系アメリカ/カナダ人劇作家Rick Shiomiと、彼が芸術監督を務めるTheater Muである。Rick Shiomiは平成16年9月に来日し、東京と大阪で開催された日系アメリカ演劇セミナーにおいて、講演と自作演劇Rosie's Cafeのリーディングを行った。その後、筆者はメール等によりShiomiへインタビューを行い、『英語青年』2月号にShiomiとTheater Muに関する小論を掲載した。2005年3月には、MuのミュージカルWalleye Kid上演初日とその後のシンポジウム参加のため、ミネアポリスに赴く予定である。 Muは、アジア伝統文化を斬新な表現方法で劇化している。その上演リストは、David Henry HwangやPhilip Kan Gotandaなどのメジャーなアジア系劇作家の戯曲の他に、アジア諸国の音楽、舞踊、日本の太鼓などのパフォーマンスをも含む。また、Shiomi自身の代表作には、Yellow Feverの他に、米国における韓国人養子問題を題材とし、その家族関係における複雑な心情を、伝統的な韓国仮面舞踊を駆使して表現した戯曲Mask Danceがある。 Muはまた、劇場上演のほかにOutreach Programを設け、教育機関等に自らのパフォーマンスを「出前」し、日本の伝統文化とアジア系アメリカ文化を繋ぐ架け橋として、新しいアジア系パフォーマンスを発信している。日系カナダ人としてのアイデンティティを思索するShiomiは、敢えてアジア系の色が薄いミネアポリスでの上演に力を注ぐ。また彼は、日本での演劇研究者とのセミナーや、自作劇の更なる日本上演にも興味を抱いている。その計画の実現に向けて、私は今後調査を進める予定である。 本年度はその他、アジア系アメリカ演劇とメジャーなBroadway演劇との比較も行い、Tony KushnerのAngels in Americaに関する論文、Tennessee Williams戯曲に関する博士論文、そして現代演劇と20世紀初期のアメリカ演劇を比較する試みから、Susan Glaspell戯曲に関する論文を執筆した。
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