2002 Fiscal Year Annual Research Report
巡礼地ダーグ湖の〈聖パトリックの煉獄〉をめぐる文学の研究
Project/Area Number |
14510546
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三神 弘子 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (20181860)
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Keywords | ダーグ湖 / シェイマス・ヒーニー / ダンテ / 巡礼文学 / 聖パトリックの煉獄 / 国際研究者交流 / アイルランド |
Research Abstract |
1)本年度の研究は、Seamus Heaneyの連作詩、Station Islandのテクスト分析を中心に進められた。[Station Island]が執筆、出版されたのは1983年であるが、この連作詩に、当時の北アイルランド紛争に代表されるような社会的状況、教会の抑圧という形であらわれる宗教的背景がどのような影響をおよぼしているか、分析検討をおこなった。また、この作品には、ダンテの『神曲』からの影響が大きく、ダーグ湖の贖罪巡礼に赴くペルソナとしての詩人(ヒーニー)と、地獄におりていく詩人ダンテとは重ねられ、作品に大きな枠組みを与えている。さらに、次々に召喚される亡霊が体現するアイルランドの歴史的、文学的伝統が、ダンテの枠組みとは別の指標を与えていて、ヒーニー自身の個人的自我が、ヨーロッパ的文脈とアイルランド的文脈の相剋という緊張のうちとらえられることを検討した。 2)平成14年8月に、アルスター大学のDr. Anne McCartneyとともに、ダーグ湖で3日間の現地調査を行った。ヒーニーが作品を執筆した1983年から20年が経過した今日も尚、多くの巡礼者を惹きつける3日間の贖罪巡礼を経験することで、ヒーニーの1980年代を中心に、ダンテの時代から現代に至るまでのパースペクティブを得ることができた。 3)平成15年3月には、さらに、地理的な広がり、文化的比較を可能にするために、四国遍路のフィールドワークを実施する予定。(Dr. McCartneyとの共同調査) (1)(2)(3)の研究成果は、University of Ulsterのアカデミックジャーナル、Writing Ulsterに投稿予定。
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