2003 Fiscal Year Annual Research Report
英米の階層社会における行動規範の差異を19世紀英米文学にみる
Project/Area Number |
14510549
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
倉橋 洋子 東海学園大学, 経営学部, 教授 (10082372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薬師川 虹一 東海学園大学, 経営学部, 教授 (90278408)
大場 厚志 東海学園大学, 人文学部, 助教授 (00194275)
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Keywords | 結婚制度 / セクシュアリティー / 階級 / 資本主義 / 理想主義 / 産業革命 / エートス / 自然 |
Research Abstract |
19世紀の英米文学にみられる階級間における社会的・倫理的行動規範の差異を研究した。 倉橋はケイト・ショパンの作品における女性と結婚制度を妻の役割、セクシュアリティー、母親であること等を中心に考察した。南部の女性は北部の女性より早婚で、階級や経済格差と関連しており、結婚制度における妻の役割や、母親であることは自己犠牲を伴い、慣習や法律が女性を拘束していること、また、女性のセクシュアリティーの芽生えは階級に無関係であるが、その表出は階級に関係していることを検証した。 大場はホーソーンの『ブライズデイル・ロマンス』における階級の問題を、財産や資本主義などとの関連から探る試みをした。『ブライズデイル・ロマンス』は理想主義的共同体の建設と崩壊を描いたものであるが、平等という共同体の建前とは裏腹に、当時の社会の階級がプロットの展開や登場人物たちの行動や価値観に反映している。一人称の語り手自身も階級意識にとらわれている。 薬師川は産業革命の倫理とロマン派の精神をワーズワースの行動規範を中心に研究した。湖水地方の詩人と言われてきたワーズワースにとって、湖水地方はイングランドの周縁ではなく、擬似中心であった。湖水地方を中心とみる姿勢が、彼の全ての行動規範の中心にある。湖水地方の自然は、都会に対する自然として存在するより、彼にとってはイングランドのエートスの表象として存在し、イギリス国教会の倫理の表象でもあった。そのことを示すのが、『湖水地方案内』の真意であり、当時流行していた理性中心の科学的精神からくる倫理と対立するものである。これはワーズワースのみならず、ロマン派詩人たちの精神でもあった。
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Research Products
(2 results)