2004 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスロマン派における詩と科学の対概念に関する研究
Project/Area Number |
14510559
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
石倉 和佳 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教授 (10290644)
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Keywords | イギリス・ロマン主義 / イギリス詩 / 詩論 / ヨーロッパ科学史 / イギリス19世紀文化 |
Research Abstract |
平成16年度における本研究の目的は、これまでの研究を発展させ、1)イギリスロマン主義における詩と科学の対概念について、ロマン派第一世代の詩人たちと科学者との相互交流を中心に検討することと、2)第二世代の詩人や作家の作品の中に、詩と科学の対概念がどのような表象としてあらわれているかについて検討することである。1)については、具体的にはS.T.コールリッジ、H.デイヴィー、W.ワーズワスの交流関係から、詩と科学がともに社会を改良する手段として、また科学の発展と詩とが相互に支えあうものとして現れていることを考察した。この内容は"Coleridge's Vision of A Little Colony : Questioning How Poetry and Science Meet"と題した論文にまとめて発表した。また詩と科学を統一の相のもとに見るもっとも重要な試みとしてコールリッジの「方法論」をとりあげ、デイヴィーとの関係、科学による進歩を肯定的に受け入れる「科学主義」の時代背景から検討し、研究発表(日本英文学会、発表タイトル「コールリッジの「方法論」と科学の時代」)および論文発表("Coleridge, Davy, and the Science of Method" Coleridge Bulletin)を行った。これらの研究により、ロマン主義の第一世代においては詩と科学を相互的に密接に影響しあうととらえていることが明らかになった。だたし、詩と科学を共通の抽象的な概念(対概念)の下に包括することについては、当時のイギリスでは実験科学が隆盛であったこともあって、そのような概念が社会的に流通していたというところまではいえない。むしろこの対概念は、当時起こっていた諸科学の発展の複雑な状況と文芸との関係を演繹的に整理する視点をうるために有益なものである。第二世代の詩人、作家の作品における詩と科学の対概念の表象に関しては、これまでP.B.シェリーの「詩の弁護」、およびキーツの「レイミア」を検討した。化学や地質学などの知見を詩的表現の隠喩として用いることは、第一世代の作品にも見られるが、第二世代においては詩的創造の精神と科学的発展とを内的関連のあるものとしてとらえることは、所与の感覚として把握され表現上の要素として現われている。詩と科学の共通概念は、詩や散文における表現の原理的なものへと発展解消される傾向が見られる。
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Research Products
(2 results)