2005 Fiscal Year Annual Research Report
北アイルランド小説の可能性-ジョージ・A・バーミンガムを中心に-
Project/Area Number |
14510560
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Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
八幡 雅彦 別府大学, 短期大学部, 助教授 (50166568)
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Keywords | ユーモア / プロテスタント / カトリック / ユニオニズム / ナショナリズム / コズモポリタニズム / ベルファースト和平合意 / 融和と普遍性の模索 |
Research Abstract |
平成17年度はジョージ・A・バーミンガムとグレン・パタソンに関する研究が主だった。 バーミンガムのThe Wisdom of the Desert(1904)は、5世紀頃エジプト、パレスチナ周辺の砂漠地帯に住んでいたキリスト教隠遁者たちの自己犠牲的生活を紹介したエッセイである。この作品はバーミンガムの深いキリスト教信仰を示している。バーミンガムのユーモア小説は深みのない娯楽小説と誤解されがちである。しかし彼がユーモア小説の中で描く人間同士の融和は、彼の深いキリスト教信仰に裏打ちされたものであることが理解できた。平成17年9月3日には、アイルランド・ウェストポートで行われたバーミンガム短編小説賞授与式で、General John Regan(1913)を中心にバーミンガムのユーモア小説の持つ深い洞察性について講義を行った。そしてダブリン大学トリニティー・カレッジ図書館において、General John Reganのステージドラマが巻き起こした騒動についての資料収集を行った。その後、『別府大学短期大学部紀要』第25号に、短編小説"Starting the Train"の分析と日本語訳を発表した。今後は、キリスト教思想がいかにバーミンガムのユーモア小説の中に反映されており、彼のユーモア小説に普遍的価値を与えているかを研究課題とする予定である。 パタソンとは9月にベルファーストで会い、最新作That Which Was(2004)の舞台となった場所に案内してもらい、この小説に対する理解を深めることができた。そして11月26日の日本アイルランド協会年次大会において、この作品がいかにベルファーストの過去と現在を如実に描いているかということについて口頭発表を行った。また、日本アイルランド協会学会誌『エール』第25号に、「北アイルランド小説の新たな潮流」と題する論文を発表し、北アイルランドが紛争を乗り越えコズモポリタン的な社会へと変貌しつつあることを示した。いつかパタソンの小説を翻訳紹介したいと考えている。
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Research Products
(2 results)