2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510569
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東郷 雄二 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (10135486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 充 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60129947)
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Keywords | 指示 / 照応 / 不定名詞句 / 総称 |
Research Abstract |
本研究は、自然言語における指示と照応現象を語用論的観点から解明しようとするものである。従来、指示と照応は、言語記号と指示対象、先行詞と照応詞のあいだの関係として把握されてきた。しかし、本研究で用いた会話フランス語のコーパスを精査すると、先行詞のない代名詞、不定名詞句の先行詞を持たない定名詞句照応、先行詞と照応詞との性数の不一致など、従来のモデルでは説明できない照応現象が多数見られた。本研究ではこのような現象を適切に解明するには、談話を話し手と聞き手の相互行為として捉え、話し手側と聞き手側の両方に指示対象が登録される心的モデルとしての談話モデルが必要であることを示した。またこの心的モデルの重要な特性のひとつとして、累積的(cumulative)特性を持つことが必要である。Russellの示したA dog came in. It sat down under the table.のように、複数の文にまたがる照応の場合、不定名詞句a dogを束縛する存在量化子の作用域を一つ目の文の終わりまでとすると、代名詞itの指示が確定しない。累積的談話モデルにおいては、不定名詞句a dogが聞き手の言語文脈領域にdiscourse referentを登録し、代名詞itはこうして登録されたdiscourse referentを指示対象とすると考えることによって、Russellのパラドックスを回避できる。Kamp & Ryleの談話表示理論もこの間題を解決するべく提案された理論であるが、すべての名詞句を変数として扱ったため、照応現象の累積的性格をうまく扱うことができない。本年はこのようにして開発された談話モデルを用いて、フランス語における複数不定名詞句主語の総称解釈の問題と、コピュラ文における名詞句の指示の問題を扱った。
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Research Products
(3 results)