2003 Fiscal Year Annual Research Report
ケベック文学の受容とフランコフォン・アイデンティティ
Project/Area Number |
14510574
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Research Institution | MEIJI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小畑 精和 明治大学, 政治経済学部, 教授 (30191969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺家村 博 拓殖大学, 政経学部, 助教授 (40307153)
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Keywords | ナショナル・アイデンティティ / フランコフォニー / ケベック文学 |
Research Abstract |
カナダ・ケベック州の「仏系カナダ文学」が「ケベック文学」として語られるようになるのは1960年代のことである。それまで、仏系カナダ人は、フランスの伝統とカトリック教会の説く精神的崇高さを拠り所としていた。「静かな革命」と呼ばれる60年代に彼らは「フランス」から自立したアイデンティティを確立し、自らを「ケベック人」と称するようになった。 70年代に入るとフランス本国でも「ケベック文学」は認知されるようになり、新たなフランコフォン意識の形成に大きな影響を持つようになる。かつてのネグリチュードもフランス本国を中心とした「フランス語圏」意識に対する意義申し立てであったが、それは植民地主義VS反植民地主義という対立を軸にしたものであった。それに対して、「ケベック文学」の受容は、グローバリズムに対するローカリズムとして捉えられるようである。それはまたエーメ・セゼールらのネグリチュードから、マリーズ・コンデやラファエル・コンフィアンらの「クレオール文学」への変容と呼応してもいるようである。 言語面でも、「訛ったフランス語」として蔑まれ、「ジューアル」と呼ばれていたケベック方言が、60年代には自分達の言葉として、肯定的な役割を見出されていく。小説においても、ジャック・ルノーらはジューアルを積極的に使用するようになった。フランス本国の言葉が唯一正統であり、その他を変種とするのではなく、様々なフランス語の存在を認めようとする意識は、これまた、「クレオール文学」においても見られる現象であろう。
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