2002 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ市民社会における聴覚文化の位置とその言語的表象
Project/Area Number |
14510583
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三谷 葉子 大阪大学, 文学研究科, 助手 (50243142)
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Keywords | 聴覚文化 / 聴覚イメージの形成 / 市民文化と道徳 / 日本における洋楽受容 / 音楽とナショナリズム / イメージの中の女性 |
Research Abstract |
2002年9月に開催されたドイツ民俗学会・比較音楽民俗文化研究部会(同9月に改名)によるシンポジウムの準備のため、本年度前半は日本における洋楽受容、および学校唱歌と童謡運動の関係についての文献調査にあたった。19世紀前半にドイツの市民階級によって形成された聴覚イメージが、19世紀末の日本での受容の時点にまで強固に生き続けていることを確かめることができた。ドイツ・フォークトランド地方で行われたシンポジウムでの口頭発表は、2004年までに論集の形でまとめられる予定であり、質疑での議論をふまえて手直しした原稿を、部会代表のバンベルク大学ブレッカー教授に提出した(論集タイトルおよび出版社が未詳のため、業績一覧に記載せず)。渡欧の際、ウィーン大学で文献調査を行うとともに、イェナ大学の民俗学研究室スタッフとの研究交流を行い、民俗学が社会学だけでなく歴史学の文化史研究とも連携を強めている現況について知見をえた。 年度の後半は、ウィーン大学で収集した資料の他に、国立国会図書館、東京芸術大学をはじめとする首都圏での調査結果にももとづいて、19世紀前半ドイツ市民階級の音楽文化ならびにその中で形成された聴覚にまつわるイメージについての研究を進めている。イメージ形成のメカニズムに迫るためにさまざまな文学作品テクストを参照する一方、文学と音楽の両面で活躍したE.T.A.ホフマンによる著作を音楽学研究者と共同で精読している。19世紀ドイツの音楽文化において、女性音楽家の存在はとくに強力なイメージのもとに語られ、彼女たちの実際の活動までが市民道徳のみならず男性によって付与されたイメージによって縛られていたことを明らかにする点では、国立音楽大学の小林緑氏、桐朋学園の玉川裕子氏との研究交流が資するところ大であった。
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