2003 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ市民社会における聴覚文化の位置とその言語的表象
Project/Area Number |
14510583
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三谷 葉子 大阪大学, 文学研究科, 助手 (50243142)
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Keywords | 聴覚文化 / 聴覚イメージの形成 / 市民文化と道徳 / 日本における洋楽受容 / 音楽とナショナリズム / イメージの中の女性 |
Research Abstract |
引き続き19世紀前半のドイツ語圏音楽生活について、女性音楽家をめぐる状況を中心に調査を行った。とくにハープとグラスハーモニカという、もっぱら女性によって演奏された点で特異なふたつの楽器を取りあげてその歴史・構造から、音楽批評や文学作品にみられるこれらの楽器のイメージまで、詳しく検証した。これらの楽器の例を手がかりに、音楽研究者や批評家による、女性演奏家の身体性の剥奪という問題について考察した。さらに、女性作家で音楽家でもあったドロステ=ヒュルスホフの作品を取りあげて、彼女がハープを弾く女性という時代に典型的な人物を造型しながら、男性の音楽批評家の言説とは逆に、そこから女性の身体性を意識化し回復する方向を模索していたことを、論文としてまとめた。次年度に発表する論文ならびに博士論文執筆の準備のために、人間の声をめぐるイメージと音楽の関係についての調査を進めている。2度の東京出張では、桐朋学園音楽部ならびに東京芸術大学で資料調査を行い、19世紀の音楽雑誌ならびに音楽事典の記事を中心に、歌手のコンサートについての批評や発声に関する理論、女声合唱の歴史などの資料を探索した。併せて、桐朋学園の玉川裕子氏と研究交流を行い、関東の「女性と音楽研究フォーラム」で取りあげられている女性音楽家についての情報を得た。歌う女性についての19世紀前半の言説を手がかりに、人間の声について18世紀末から19世紀前半に形成されたイメージを再構成し、同時期にはじめられた口頭伝承の収集・研究との関連について考察するのが長期の課題である。
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Research Products
(1 results)