2004 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ市民社会における聴覚文化の位置とその言語的表象
Project/Area Number |
14510583
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三谷 葉子 大阪大学, 文学研究科, 助手 (50243142)
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Keywords | 聴覚文化 / 口承文化 / 民謡・民俗研究 / 音楽とナショナリズム / 市民文化と道徳 / ジェンダーとイメージ |
Research Abstract |
科研の最終年度にあたって、本研究のテーマのひとつ、すなわち18世紀末から19世紀前半の市民社会における音楽文化の実態、とりわけ市民の音楽生活における女性の役割についての研究のまとめに入った。その成果が2004年に発表した2本の論文となり、さらに本研究と密接な関連を持つため、ずっと平行して作業を進めてきた翻訳書を、2004年12月に公刊することができた。市民社会の音楽文化を研究する上で不可欠な研究書を日本語にできたことの意義は大きく、またすでに訳業として高い評価を受けている。またこのテーマに関しては、首都圏を中心に活動している音楽学研究者との交流を通じて、明治末から大正期の日本におけるドイツ的・ブルジョワ的音楽生活のスタイルの受容、それと日本における洋楽受容との関わりなど、新たに興味深い視角を得ることができた。 また、ドイツ語圏でほぼ同時期に行われた民謡・口頭伝承の再発見を、「文字の文化」に対する「声の文化」の復興という視角から振り返って、従来から続けてきたドイツ語圏民謡研究史の再考をはかり、その成果を2004年秋・日本独文学会主催の国際学会での口頭発表、そして12月発行の論文としてまとめた。現在、「日本におけるドイツ民謡研究」書誌を作成しており、その関連で、日本の洋楽受容および西洋式音楽教育の黎明期において、ドイツ民謡のレパートリー、あるいはヘルダーをはじめとするドイツの文学者・思想家の民謡理論がどのような影響を及ぼしていたかを、併せて考察の対象に取り入れている。 ふたつの研究の柱を結びつける上で、19世紀ドイツ市民の音楽生活における、レパートリーとしてのドイツ民謡というテーマが重要と考えられる。スコットランド民謡が19世紀イギリスのブルジョワ家庭で音楽の重要なレパートリーとなっていたことを指摘した社会史の研究が参考になったが、この分野での調査は3年の期間中に終えることができなかった。
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Research Products
(4 results)