2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510598
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
神尾 達之 早稲田大学, 教育学部, 助教授 (60152849)
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Keywords | 文化学 / ドイツ文学 |
Research Abstract |
本年度は、カルチュラル・スタディーズ(以下CS)の受容における特殊ドイツ的な性格とはいかなるものかを考察した。ドイツの大学はCSの受容に関してかなり慎重だった。アングロサクソン系のCSが主としてマルクス主義と構造主義を応用し、ポップ・カルチャーにまで考察対象を広げたのに対し、ドイツの大学は、研究方法としてのマルクス主義を脱イデオロギー化することができず、アドルノ以来、いわゆるロー・カルチャーを対象として取り込むことができなかったからだ。しかしながら、90年代、ドイツの大学で「文化学」が一種の流行現象になったのは、それが、CS特有のイデオロギー批判から、かなり自由であったことに起因する。ただし、「文化学」はCSと相容れないのではなく、CSは「文化学」に包括される一つの方法として位置づけられる。その点で、英米のCSが対象領域の選択において自由だとすれば、ドイツの「文化学」はその方法論の多様性において自由だということができるだろう。しかしながら、この方法論の多様性は、ドイツの伝統的な学問が通有する厳密な方法と体系への志向とは、本来矛盾する。この二つの方向性が矛盾にとどまるのか、それとも新しい知へと総合されるのかを考察することも、本研究の今後三年間の課題になるだろう。なお、本研究が開始する直前の平成14年3月に、日本独文学会が主催する蓼科文化ゼミナールにおいて、「Neun Thesen zur Moeglichkeit einer kulturwisse nschaftlich orientierten Literaturwissenschaft im Kontext der gegenwaertigen japanischen Germanistik」というタイトルの講演を行い、招待講師であったベルリン・フンボルト大学のH.ベーメ教授と意見を交換することができた。
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Research Products
(2 results)