2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510601
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
関口 時正 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (40126280)
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Keywords | ポーランド / メスィヤニズム / 十一月蜂起 |
Research Abstract |
初年度にあたる平成14年度は、主として文学以外の歴史学や一般評論分野においてこれまで入手できていなかった資料の収集に努めたが、所期の目的は達したと考える。これら新資料により新たに明らかになった主な論点として、(1)ポーランド<防壁>神話の変容・強化には1830年の「十一月蜂起」が従来考えられていた以上に大きく関係していること、(2)「十一月蜂起」以後急激に成長し、19世紀の間中ポーランド語空間の中で大きな力を持ち続けたもう一つの神話である「ポーランド・メスィヤニズム」は、<防壁>神話という基盤の上に有機的に築かれたものであり、<防壁>神話の理解なしには後者の言説も理解できないことが明らかになったこと、(3)ポズィティヴィズムの台頭により大きく抑制された<防壁>神話は、その後ふたたび新ロマン主義の時代、第1次世界大戦期に言説を強化されるさまが具体的にわかってきたこと-などが挙げられる。さらに、ヴィクトル・ユゴーの政治家(貴族院議員)としての最初の演説はポーランド問題を論じたものだが、この演説を詳細に分析して、その中に含まれる<防壁>神話を翻訳した(従来手をつけられていない領域)。これらの新しい知見も含めて、平成14年11月25日には東京外国語大学公開講座で「ポーランド人の肖像」と題し、平成15年1月27日には在ワルシャワ日本大使館において「<防壁>神話とポーランド人」と題して講演を行った。また論文「ポーランド語文学を語り続ける<民族>」(岩波講座『文学』第13巻)にも今年度の研究の一部を盛り込むことができた。
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Research Products
(1 results)