2003 Fiscal Year Annual Research Report
認知言語学的観点を取り入れた格助詞の意味のネットワーク構造解明とその習得過程
Project/Area Number |
14510615
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森山 新 お茶の水女子大学, 留学生センター, 助教授 (10343170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長友 和彦 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (60164448)
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Keywords | 認知言語学 / 格助詞 / 習得過程 / 放射状カテゴリー / 意味構造 / 多義語 / 第二言語習得 / 日本語教育 |
Research Abstract |
本研究では認知言語学的観点から格助詞の放射状カテゴリー構造を解明しているが、本年度は2年目として、格助詞デ、ニ、ヲ、ガについての考察を行った。 格助詞デについては、2002年の森山の先行研究で明らかにした「プロトタイプ的な用法が場所格であること、デの個々の意味は前景を構成する動作連鎖全体に対し、ある背景を補足的に示すといったスキーマ的意味を共有していること」に対する考察をさらに深め、具体的な放射状カテゴリー構造を明らかにした。また、そうした意味構造が習得とどのような関係にあるのかを分析した。さらに言語習得とはカテゴリー化の過程と表裏一体であることを示した。 格助詞ニについては、2003年の森山の先行研究にあるように、様々な意味用法を有しているが、それらの多義性が認知主体の認知の仕方と関係があることを示した。具体的には、事態に対する把握のプロセス性(プロセス的把握/存在論的把握)と、事態に対する把握の主観性(客観的把握/主観的把握)により4通りの把握の仕方が生まれ、これが多義を生み出している一つの原因になっているとした。 格助詞ヲについても、その放射状カテゴリー構造を明らかにした。ヲのプロトタイプは対格用法であり、ここから場所、状況、時間などの意味が拡張して生じたことや、ヲが共有するスキーマは「動作主(ガ格)からの動力連鎖が結ばれ、その動力圏内(動力連鎖の終点)に置かれている」であることを示した。 格助詞ガについても、その放射状カテゴリー構造について考察し、以下のような点を明らかにした。(1)格助詞ガはニと同様、「プロセス的把握における動的な参与者としての用法」と「非プロセス的、存在論的把握における静的な参与者としての用法」とがある。(2)ガの「プロセス的把握における動的な参与者としての用法」には客観的把握による「プロセス的主体」の用法と主観的把握による「プロセス的対象」の用法とがあり、「非プロセス的、存在論的把握における静的な参与者としての用法」にも客観的把握による「非プロセス的主体」の用法と、主観的把握による「非プロセス的対象」という用法がある。それぞれにおいて後者(主観的把握)は、認知主体の何らかの動機づけにより前者(客観的把握)から派生した拡張的用法である。(3)ガの「プロセス的把握における動的な参与者としての用法」と「非プロセス的、存在論的把握における静的な参与者としての用法」とは、「表現の対象としてスコープされた部分の中で、最大の際立ちを与えられた参与者(トラジェクター)を表す格」であるといった超スキーマにより一つのカテゴリーとしての連帯を保っている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 森山新: "格助詞ガの意味構造についての認知言語学的考察"お茶の水女子大学人文科学紀要. 57(未定). (2004)
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[Publications] 森山新: "言語習得と認知言語学"第二言語習得研究会第14回全国大会予稿集. 18-23 (2003)
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[Publications] 森山新: "認知主体の把握のしかたと格助詞ニの多義構造"韓国日本学会第68回学術大会Proceedings. 43-50 (2004)
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[Publications] 森山新: "認知的観点から見た格助詞ヲの意味構造"台湾日本語文学会2003年度日本語文学術検討会予稿集. 43-50 (2003)
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[Publications] 森山新: "格助詞デの放射状カテゴリー構造と習得との関係"日本認知言語学会第4回大会 CONFERENCE HANDBOOK. 51-54 (2003)
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[Publications] 森山新: "認知的観点から見た格助詞ヲの意味構造"台湾日本語文学報. 18. 191-211 (2003)