Research Abstract |
本研究の目的は,ハンガリー語の動詞接頭辞の意味と機能を認知言語学の観点から分析することである.ハンガリー語の動詞接頭辞は,中立文においては動詞の前に接統して,動詞に完了の意味を付加したり,動作の方向を表すなど,さまざまな副詞的意味を付け加える要素である.意味論のレベルでは,動詞に前接する接辞と考えられるが,構文によっては動詞から分離して,動詞の前方や後方に置かれることや,条件によっては,動詞接頭辞だけで文の構成要素になることが可能であるなど,統語論のレベルでは独立した品詞のような振る舞いをする.このような統語上の複雑な性質に加えて,その意味と機能はさらに変化に富んでおり,記述がきわめて困難とされている.本研究では,動詞接頭辞の多様性に富んだ意味は,認知言語学でいうところの家族的類似性によって放射状に結びつけられた多義的カテゴリーであると仮定して,さまざまな動詞接頭辞の意味と用法は,もっとも基本的な意味である空間的用法(基本的スキーマ)からメトニミーやメタファーなどの意味拡張によってもたらされるものと考える.各動詞接頭辞の多義的カテゴリーの構造を明らかにするために,今年度は以下の作業を行い,次のような結果が得られた. (1)前年度に引き続き,使用頻度が高い接頭辞つき動詞の意味分析を行った. (2)主な動詞接頭辞meg, fel, le, ki, be, atの意味分析を行った. (3)上記の主な動詞接頭辞について,その多義的カテゴリーの構造の構築を試みた. (4)空間的意味,完了的意味以外にそこから派生したさまざまなメタファー的あるいはメトニミー的意味があることがわかった.しかし,関連づけることの困難な事例もあり,来年度の課題とした.
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