2002 Fiscal Year Annual Research Report
船に見る地中海文明史-ギリシアを中心に-古代から現代まで
Project/Area Number |
14510642
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Research Institution | 東京商船大学 |
Principal Investigator |
丹羽 隆子 東京商船大学, 商船学部, 教授 (10198541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 寛 東京商船大学, 商船学部, 教授 (90016949)
庄司 邦明 東京商船大学, 商船学部, 教授 (80092584)
大津 皓平 東京商船大学, 商船学部, 教授 (40016944)
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Keywords | 北アフリカ沿岸 / 海の民 / 海底考古学の発展 / 港とship-shed / 造船術と航海術 / star-compassとwind-compass / shell-first method / 海の文明 |
Research Abstract |
平成14年夏22日間にわたり東地中海中心の実地踏査を行った。結果、古代、地中海は北アフリカ側から発展したことが、エーゲ海島嶼、クレタ島南岸、キプロス島南岸、ビブロス、カルタゴ、ケルクアンなどの港湾遺跡や広大な海洋都市遺跡に立って実感できた。また、木造船を水と太陽から保護するためのship-shed跡がアテネの.ピレウス港、カルタゴで確認できたが、かなりの大型外洋船が古くから存在したこ.とも確かめられた。その周辺には良港の条件として適度に入り組んだ入江や海岸線がつづいていることも確認できた。外洋船が行き交うには港のほかに造船のための資材、船を造る人間、物を運ぶ人間、運ぶ物資が必要だが、海の民フェニキア人(カナン人の末商か?)の台頭が造船術、航海術の発展に大いに寄与した。彼らはまず北アフリカに向かった。それは、レバノン杉をエジプトのファラオに高値で売りつけるためでもあったろう。エジプトからは主として穀物を持ち帰った。オリーブ油、ワインなど生活物資が交易の主品目だった。海に生きる人々の、いわゆるstar-compassとwind-compassを頼りの冒険と開拓の航海経験は、前8世紀頃、海洋史にギリシアが登場する頃には、中世の磁気コンパス登場までの航海術と造船術の基本を確立させていた。海は冒険のみでなく生活と交易の場となった。現代の科学技術は古代漕ぎ船や帆船を稚拙な船として軽視しがちだが、海底考古学の発展により海底から救出された沈没船の分析研究は、精巧な技術や知恵に裏打ちされた船が古代文明に存在したことを証明している。またその発見が解明した古代地中海の造船術は近代ヨーロッパが知らなかった"shell-first method"だったことがわかった。「海の文明」の未知の部分が啓かれた顕著な一例である。以上の様なことを調査、研究、分析した。
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