2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510645
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内藤 高 大阪大学, 文学研究科, 教授 (60188860)
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Keywords | 近代日本画 / 西欧文学芸術 / 大正時代 / 近代的自我 / 恋愛と性 / 江戸の再発見 / 郷愁 |
Research Abstract |
上記の研究課題に従って、本年度もまず大正・昭和初期の日本画関係の文献資料の収集を充実化するとともに、本年度は特にフランスでパリの国立図書館を中心に資料の調査を行い、日本画に近代芸術的な意味を付与することになった西洋の近代文学芸術の重要な源泉や海外の展覧会に出品された当時の日本画に対する反響などについて検討する作業を行った。昨年度の実績報告書において、本研究の中心となるテーマが絞られつつあることを記したが、そこで述べたように、大正の頃の日本画家たちに芽生えていく<近代的自我意識>の問題が西洋から移入された様々な思想とどう結びつくか、とりわけ恋愛や性の問題とどう関わるかについては重要な関心を持ったテーマであり、重点的に考察を行った。またこの大正の頃の時期が、近代化が進み、それが一段落するとともに、江戸時代というものに対して、あるいはより一般的に過去に対する<郷愁>というものが出現する時期であることに注意して、そうしたものを作り出す装置としての絵画の役割について考察を試みた。こうした過去を追想する装置としての役割は、西洋においても19世紀後半のゴンクールやヴェルレーヌの18世紀思慕という現象にまず現れているし、その影響を強く受けた永井荷風の浮世絵の「再発見」にも強く反映されている。こうした並行現象の意味についてもよく考えてみたい。調査などで不十分なままで終わった点もありとても最終的な報告とはいえないが、以上のような観点から、現在論文を執筆中であり、成果報告書を始め、他2本ほどの論文を平成16年度末までのうちに刊行予定である。
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