2002 Fiscal Year Annual Research Report
東洋・西洋の「色彩」とそのイメージの比較文学・比較文化的研究
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14510647
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水島 裕雅 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (10034597)
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Keywords | 色彩語彙 / 色彩感覚 / イメージ / シンボル / 中国の古典詩歌集 / 日本の古典和歌集 / 日本の近代文学 / 広島の原爆文学 |
Research Abstract |
3年間の研究の初年度にあたるので基礎的統計処理を中心に行った。 本年度は東洋の詩歌に見られる色彩語彙(名彩名と名彩語)の頻度について、日本と中国の場合を対象として考察した。 まず中国の古典詩歌集である『詩経』と『唐詩選』の色彩語彙について調査した。その結果、『詩経』においては色彩名だけでも39種151回見られたが、その他にこの詩集の特徴と思われるが馬の毛色を表す語が12種16回も見られた。色彩名の頻度は白系、黄系、赤系、青系、黒系の順であるが、緑を青系に入れると赤系を上回る。 一方『唐詩選』においては、青系、白系、金系、赤系、黄系、黒系の順に34種399回の色彩名が見られ、多彩で華やかな色彩感覚が伺われる。また固有名詞に色彩名が41回も使用されているのもこの詩集の特色であろう。 現在日本の『万葉集』『古今和歌集』などの古典詩歌集について調査中であるが、概して和歌の場合色彩名の種類が少なく(『万葉集』では30種)、時代が下がるにつれてより減少し、特定の色(たとえば『古今和歌集』では「白」に集中し、1111首中72回も見られる)に集中する傾向が見られる。 両者を比較した研究は「色彩語彙から見た日中文化の伝統と革新-中国文化の日本文化への影響と日本文化の独自性についての一考察」(仮題)として、2003年8月にポーランドのワルシャワ大学で開かれるヨーロッパ日本研究協会第10回大会で発表される予定である。 また日本の近代文学においては原民喜、峠三吉などの広島の原爆文学に見られる色彩語彙について考察し、さらに大学院生を指導して、中島敦、阿部公房、吉本ばなな、韓国の辛京淑についても考察した。
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Research Products
(1 results)