2004 Fiscal Year Annual Research Report
法曹倫理学の歴史と課題-法曹養成システムにおける法曹倫理教育の観点から
Project/Area Number |
14520006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森際 康友 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40107488)
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Keywords | 法曹倫理 / 法科大学院 / 裁判官倫理 / グローバル化 / 弁護士職務基本規程 / ホットポテト / 公共性 / 法解釈における正義 |
Research Abstract |
最終年度の16年度は、私が主催する、地域の法科大学院での法曹倫理担当者および法曹倫理に関心を持つ実務家・研究者からなる愛知法曹倫理研究会での研究活動を軸にして、わが国法科大学院における標準的法曹倫理教育のモデル教育内容を提示すべく、教科書編纂に励んだ。その成果は、入稿も終わり、名古屋大学出版会より『法曹の倫理』として近刊の予定である。 また、法科大学院における法曹倫理の教育方法の開発にも力を注ぎ、その成果は、16年12月1日、名古屋大学野依学術記念館で開催した「法曹倫理教育の理念と課題」シンポジウムにおいて全国から多分野の専門家や学生を集めて行われた。その理念として、実務の場で尊敬を呼ぶ法曹像の確立とその教育的実現、その課題として、理論的基礎の充実、国際的視野の確立、そして現場の葛藤が伝わる教育手法の開発、が提起された。詳細は、文献表の文献に譲るが、実務家と研究者の協働がなければ、法曹倫理学の樹立とそれに基づく教育方法の確立は困難であることが強調された。とりわけ、現場での倫理的葛藤について何をどのように教えるかという問題が大きな反響を呼んだ。理論的にも難問であるのは、司法という公共世界の維持発展に与る弁護士が、同時に法律事務所の経営者である場合で、公民としての弁護士の責務と経営者としてのそれとが衝突した時にどうするか、というものである。こういった問題意識に基づき、愛知大学、名古屋大学それぞれの法科大学院で模擬授業を行い、開発した手法を実験した。それをビデオ録画し、シンポジウムで供覧し、会場を巻き込んだ議論を行った。こうして法曹倫理教育の理念と課題について議論が深められ、地域およびインターネットを利用した全国的ネットワークの確立の必要性が浮彫となった。これ以外にも、各地の司法書士会や一橋大学での講演など、知識や問題意識の普及に努めた。 以上は、最終年度に必要な研究成果のとりまとめとその発信にかかわる主たる活動であったが、発表内容からもわかるように、法曹倫理の学問としての確立に向けた継続的で地道な調査と情報の共有がこれからさらに必要である。調査に関しては、第3年度は、裁判官倫理研究の面で大きな進展があった。まず、夏季にフランスの法務官研修所とドイツにおける裁判所での調査を行った。それを機縁として、12月にドイツの裁判官アカデミーでの講演に招かれ、報告が好意的に受け入れられ、数日にわたり有益な意見交換ができ、再度の招待を受けた。また、裁判官倫理に関する、フランスを中心とした、EU、さらに国際的な共同研究が持ち上がっている。こういった体験や研究の成果のわが国への還元をめざし、積極的に取り組みたいと考えている。
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Research Products
(4 results)