2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520013
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
奥田 敦 慶應義塾大学, 総合政策学部, 助教授 (50224150)
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Keywords | イスラーム / イジュティハード / 人間 / 人権 / ハッラーク / ブーティー / 井筒 / 西谷 |
Research Abstract |
イスラームにおける人間と人権について、昨年度に引き続きフィールド・ワークによる現地専門家との意見交換と日本における文献研究を中心に研究を進めた。人間論においては、これまで狭義の宗教的意味合いにおいてのみ扱われてきたイスラームにおける「人間」概念(たとえば井筒『超越のことば』)をより広い意味での人間把握に結びつける端緒を得た。人権論については、教えとしては存在するものの実践に移されない人権論の実際とイスラームの教えの「理性」による正しい理解の必要がフィールド・ワークを通じても明らかになった。 フィールド・ワークは、9月と3月の2回にわたって行い、現地(アレッポを中心とするシリア)の専門家と引き続きイスラームにおける人間論を中心に意見交換を行った。フィールド・ワーク以外では、ブーティー『アッラーかそれとも人間か(Allah am al-insan)』(アラビヤ語文献)の精読を通じてイスラームにおける自由と人権のイスラームの側からの現代的な理論的基盤を考察した。また「イジュティハードの門」の閉鎖というイスラーム法研究の西側における定説を覆したハッラークの関係諸論文の再検証を行い、この問題における啓示と理性のバランスの重要性を再認識した。研究成果としては、ハッラークの論文から編集・翻訳を施した『イジュテイハードの門は閉じたのか〜イスラーム法の理論と歴史〜』が慶應義塾大学出版会から出版された(9月)。また法文化学会第6回研究大会(甲府)において「イスラーム法における身体性〜ラマダーン月のサウム(斎戒)を中心に」と題した研究発表を行うと同時に、諸宗教における身体の問題を扱ったパネルディスカッションのパネラーとしても研究成果の一部に基づく発表を行った(10月18・19日。なお、研究発表の内容は、研究論文として2004年度に発行予定の同学会編集による叢書第4号に掲載予定)。 さらに本研究で明らかになった人間観をもとにしたイスラーム圏との文化交流の意義について「アル=アラーカート・アッ=スーリーヤ・アル=ヤーバーニーヤ・アッ=サカーフィーヤ(シリア・日本の文化関係)」と題してシリアアラブ共和国アレッポ市の国立文化センターにて講演を行った(アレッポ大学日本センターが共催。アラビヤ語。3月16日)。日本社会についての宗教に関する内在的な視点(西谷『宗教と非宗教の間』)が、イスラーム圏との発展的建設的な相互理解に対して有効であることも確認された。
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Research Products
(1 results)