2003 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト冷戦期におけるアメリカ国家安全保障法制の構造転換に関する実証的研究
Project/Area Number |
14520025
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 篤尚 神戸学院大学, 法学部, 教授 (00314708)
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Keywords | 安全保障 / テロ / サイバーテロ / 電子的監視 / 米国 |
Research Abstract |
本年度は、主に、米国WEST社が提供するオンライン有料データベースWESA LAWならびに米国の非営利団体National Security Archivesのオンライン有料データベースによって得た資料に基づき、レーガン=クリントン政権期におけるサイバーテロ対策法制、ならびに2001年10月26日制定のUSA Patriot Actにおける当局の市民監視・捜査権限をさらに拡大することを目指した第2愛国者法案(Domestic Security Enhancement Act of 2003)に関する資料の収集・分析をおこなった。 前者については、レーガン=クリントン政権期にテロ対策のために制定された諸対テロ立法が、テロリストの監視・追跡のために導入したサイバー監視(電子的監視)手段の技術革新に伴い、クリントン政権期に、逆に、電子的手段を駆使したサイバーテロの脅威を生み育てることになり、その結果、1997年重要インフラストラクチャー保護に関する大統領特別委員会の設置を定めた大統領命令13010号ならびに1996年国家情報インフラストラクチャー保護法の制定へと至った過程、ならびにそれらの内容の検討を行った。さらに、サイバーテロ防止のためにFBI国家インフラストラクチャー保護センターや重要インフラストラクチャー保障局の創設を定めた大統領決定指令63号、2000年情報システム保護国家プランの制定過程と内容の検証、さらには、これらの諸規定と1996年コンピュータ犯罪法との関連性などについても検討を行った。 後者については、ブッシュ現政権が、2001年からのアメリカ=アフガニスタン戦争での「圧勝」の勢いにのって、2001年10月26日制定の愛国者法(USA Patriot Act of 2001)において獲得した令状なしでの予防拘束、電話・電子メールの盗聴監視権限(時限規定)などを拡大するために成立を目指した第2愛国者法案(Domestic Security Enhancement Act of 2003)の立法過程とその内容の検証、さらに第2愛国者法案の制定に失敗した原因と、立法化に失敗したあとも、テロ対策・犯罪捜査等とは何の関係もない立法の中に、第2愛国者法案の規定の相当部分を紛れ込ませることによって、令状なしでの予防拘束・盗聴監視権限の拡大を実質的に達成した点についての検討を行った。 さらに、後者に関連して、ブッシュ大統領の命令に基づくアルカイダやタリバン兵のグァンタナモ海軍基地への収容ならびに特別軍事法廷での裁判の合憲性・合法性が争われている事件に関する資料の収集もおこなった。 なお、これらの検討結果の一部については,すでに、2003年6月に、『米国サイバースペース安全保障の基本法制』(国際コミュニケーション財団)、『サイバースペース法制における「安全」と「自由」の対抗・緊張関係に関する研究』(旭硝子財団)の2つの報告書、民主主義科学者協会法律部会2003年度学術総会(2003年11月23日、於金沢大学)、における口頭報告「対テロ戦争と《安全の専制》」としてすでに公表したところである
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