2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大濱 啓吉 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (50203906)
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Keywords | 行政訴訟 / 取消訴訟 |
Research Abstract |
本研究の当初の意図は、司法制度改革が議論される中で、将来の行政訴訟の制度改革を睨んで、日本と先進諸国の行政訴訟の基礎的な比較検討を行うことにあった。しかしその後の展開は急であり、来年の通常国会には新法案が提出される予定だという。そうした状況の中で、本年は、わが国の行政訴訟の基礎理論に切り込む研究に終始した。 すなわち、わが国の行政訴訟は主観訴訟(抗告訴訟、当事者訴訟)と客観訴訟(民衆訴訟、機関訴訟)を用意しているが、その中心が抗告訴訟、とりわけ取消訴訟にある。取消訴訟の排他的管轄を背景に公定力理論が基礎づけられ、その他の行政法理論が形成されてきた。その特徴は、明治憲法下の立憲君主制的残滓を反映したものである。行政処分が客観的に違法であっても裁判所で取消されるまでは有効であるということは、国民主権のもとではどう考えてもおかしい結論である。思うに、これは取消訴訟を行政庁の第一次的判断権を媒介として生じた違法状態の排除にあると把握し、訴訟物は処分の違法性であり、訴訟の性格を形成訴訟と把握した点に問題の根源がある。 私見によれば、現行取消訴訟の前提にある理論は、行政権優越の思想と消極的司法作用の概念にある。これこそ明治憲法的残滓であり、現憲法の下では法の支配の原理を根底において行政権及び司法権を概念構成することが必要である。法の支配を実現するために、行政権が何よりも法執行機関であり、司法権が人権救済機関であることから出発しなければならない。その上で、第一に、「行政庁の第一次的判断権」という特有の概念構成を打破すること、第二に、取消訴訟を確認訴訟として構成することが必要であると考える。
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