2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520033
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
土屋 孝次 近畿大学, 工学部, 助教授 (30319743)
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Keywords | 裁判官 / 弾劾制度 / 裁判官弾劾裁判所 / 裁判官訴追委員会 / 裁判官規律制度 |
Research Abstract |
1、アメリカ合衆国の連邦裁判官に対する苦情処理システムの意義と問題点を確認した。1980年に制定されたこの制度により、連邦裁判官の不当な行為に対して国民が苦情を申し立て、不適切なものに対しては司法部自らが弾劾勧告を含む是正措置をとれるようになった。アメリカでは1980年半ばから1990年代半ばにかけて、5人の裁判官が収賄等の容疑で刑事被告人となり、このうち2名が実刑判決を受け刑務所に収監された後に弾劾罷免されるなど、裁判官の非行が社会問題となっていた。1980年法の手続は、このような重大な事件の処理に一定の役割を果たしただけではなく、国民の立場から裁判官の活動を監視する制度として評価できる。もっとも、司法部の自律権的制度としての性質上、各巡回区控訴裁長官に事案処理に関する広汎な裁量を与えており、事実上多くの申し立てが却下されている点に批判が集まっている。裁判官の独立と国民に対するアカウンタビリティの確保の均衡をどのように図るかが問題となる。弾劾裁判所報2002年号において発表。 2、わが国の裁判官規律制度の中核をなす弾劾制度の意義と問題点を、平成13年(訴)第1号罷免訴追事件の事例研究によって確認した。まず、本研究では、弾劾制度の意義について、国民の公務員選定罷免権の具体化である点を前提としつつ、訴追権及び弾劾裁判権が両議院議員によって構成される機関に委任され、制度の実体・手続に関する決定が国会の立法権の範囲内であることから、均衡抑制原理の働く余地を認める。その上で、本件事案に関しては、国民主権原理の下で、弾劾裁判所及び訴追委員会が憲法的あるいは法律的職務を問題なく果たしたと評価する。特に、手続的問題として「非失官説」を確認し、将来の指針を示した点は重要である。また、訴追事由に関して、国会の批准した児童の権利条約等との関連性を指摘した点は、国会議員により構成された弾劾裁判所の政治的性質を示したものとして注目される。近畿大学工学部紀要(人文・社会科学篇)32号において発表。
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