2002 Fiscal Year Annual Research Report
国際民事紛争における権利の実現-国際倒産および国際民事執行を中心に-
Project/Area Number |
14520044
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
貝瀬 幸雄 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90169376)
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Keywords | 国際倒産法 / 比較訴訟法 / EU倒産規則 / ドイツ倒産法改正 / 金融機関の倒産 / 倒産国際私法 / 外国倒産手続 / 外国倒産承認援助法 |
Research Abstract |
この期間は、従来の国際倒産法・比較訴訟法研究を集大成し、「国際倒産法と比較法」という著作にまとめる作業にあてられた。とりわけ、同書の詳細な補論である「EU倒産規則とドイツ倒産法改正」を執筆した。ドイツでは、EU倒産規則を国内法化し、かつ、第三国との関係についても基本的に同規則の内容を適用する方向で立法作業を進めており、2002年10月23日には、国際倒産法政府革案として公表されている。そもそもEU倒産規則の規定は、EU構成国相互の法制度に対する「信頼」を前提としているものが多い(例えば、同規則33条の付随倒産手続の換価中止申立制度)。こうした規定をEU域外の第三国との関係に直接適用するのは適当ではないため、対第三国の規定に関してもEU倒産規則を基本に置きつつ、ドイツ独自の国際倒産法のルールを設けることが必要であると判断された。また、この政府草案は、「金融機関の再建および清算に関するEUディレクティヴ」の国内法化のための立法措置の意味もかねている。この研究はEU規則と対比しつつ、ドイツ草案の内容を詳細に検討しようとするものである。草案は総則・外国倒産手続・内国財産に関する属地倒産手続の三章からなる独自の規定を設けており、総則の部分は詳細な牴触規則を含む。わが国の承認援助法は牴触規定を欠いているため、ドイツ倒産国際私法学の精華というべき本革案の研究はきわめて有益であろう。「外国倒産手続」の章は、承認、保全措置、公告、登記簿、管財人の地位の証明、不動産の処分、債務者への給付、物的権利、訴訟の中断の各項目を含み、「属地倒産手続」の章は、要件、免責、後発的付随倒産手続、管財人間の協働、最後の配当の剰余金について定める。以上の検討の結果、EU規則の中でドイツ国際倒産法に対応する規定が設けられていいのは若干のEU特有の規定に限られ、その他は精粗の差はあれ第三国に対する関係でもEU規則に対応するシステムが確立していることが判明した。
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Research Products
(1 results)