2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520056
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松川 正毅 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (80190429)
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Keywords | 遺産の管理 |
Research Abstract |
平成16年度は、もっぱら情報の収集を図った。パリとトゥールーズを中心にして、公証人や研究者から、相続実務の説明を受けた。またさらに、パリ12大学とトゥールーズ第1大学では、日本の相続法の問題点を研究者や学生に対して講演し、色々な意見を頂いた。これらの調査や情報収集から、遺産分割に至るまでの期間の、遺産の管理問題に、フランスの実務家は注意を払っており、その結果、よりスムーズな遺産分割が実現できることが理解できた。相続が開始し、遺産分割までの間の権利、義務が実務的にも明確になるようにフランス法は留意されており、その間になされた、管理や、財産処分、相続債務の弁済などは、遺産分割において、直接的に考慮されるシステムが準備されている。一方で、相続財産の債権者が守られ、財産取得者の権利が考慮され、また他方では、債務を弁済したり、債権の履行を求めたり、処分をしたりした相続人間の平等が考慮される。遺産分割が比較的短期間でなされるにもかかわらず、遺産分割までの間の権利義務に解釈上の注意を払っているのは興味深い。 わが国の、相続実務では、相続開始後、遺産分割までの間の、相続人の権利義務が不明瞭であり、多くの問題を引き起こしている。この問題は、わが国の解釈学にとって、また紛争の予防の観点からも重要な領域であり、丹念な分析が必要であることが理解できた。またさらに、わが国では、遺産分割か共有物分割かで解釈の分かれることの多い問題点の解決にも、遺産管理の問題の分析によって、解釈上の回答が導かれるものと思われる。本年度は、論文を公表することはできなかったが、研究の成果の一部をを取り入れて執筆した民法(親族相続法)(有斐閣)を公刊した。
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