2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520057
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
手嶋 豊 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90197781)
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Keywords | 医療情報 / 患者の権利 / 電子カルテ / 守秘義務 / 個人情報 / HIPPA法 / 情報開示 / プライバシー |
Research Abstract |
本年度は、(1)今日の医療における患者医療情報の活用状況がどのようなレベルに達しているかについて、現状を把握することに努めた。また、(2)医療関係者が患者の医療情報の活用についてどうすべきと主張しているか、提案とそれに関連する議論の整理を試みた。これにより、医療情報に関する現状の把握と議論、現在不十分な諸点について多くの研究者が有している問題意識を共有できた。すなわち医療情報は多様で、活用状況も個別医療機関の意識と取組形態により大きな差がすでに生じているが、医療情報は全体としてはまだ十分に活用されておらず、状況改善には広く医療界・社会における理解が必要なこと、大規模なシステム化・標準化など法制度的な手当てが必須ということに集約できる。(3)医師・患者はいかなる情報を共有すべきか、医師患者関係に関する一般論についても研究を進めた。さらに、(4)医療情報の保護に関する諸外国の法制度についての情報収集に努め、これらの問題を扱う学会に出席し、特に米国HIPAA法について理解を深めた。(3)は時代と共に変遷する性質をもつが、現状の理解とありうべき姿を視野に入れることは、本研究に必須である。従来、患者への告知につき医師の裁量に任されてきた情報について患者のライフスタイルに応じた選択が必要になってきており、この点は重大な問題である。この背景には、患者も必要な情報を知ろうと思えば、IT環境によりかなりの情報を自分で集めることができる現状が存在する。他方、(4)の作業を通じて、いくつかの諸外国の制度紹介について現状を確認した。以上の作業を通じて、次年度検討すべき課題の洗い出しがかなり進んだ。患者の医療情報の法的保護をめぐる問題は、世界的に大きな変動の途中にある。本年度の研究は土台作りの基礎作業であり、来年度はこれらをもととして具体的な法制度のあり方について提案をなすことに結びつけたい。
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