2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520057
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
手嶋 豊 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90197781)
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Keywords | 医療情報 / 遺伝情報 / 医療事故 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、医療情報の保護についての文献資料の収集を継続し、内外の動向の調査を継続するとともに、これまでの研究による知見を発展させる試みとして、二つの具体的な患者情報を選択し、検討を試みた。 (1)遺伝情報は、その重大性にもかかわらず、検査への適正手続の提案が十分になされておらず、情報保護のありようもなお手探りの段階にある。遺伝情報の問題は、生命倫理上の重大問題にも関連することから、情報保護のあり方を考えるだけでは結論を出しえないということが確認されたにとどまった。今後、より広い範囲からの検討を加えた上で、この問題の方向性を出すことを試みたい。(2)医療事故情報は、事故に至るまでには様々な小さなエラーとそれに起因するヒヤリ・ハットという事態が前哨として存在し、その段階で事故の原因を縮小・除去しておけば、事故という形で危険が現実化しないものという、近時の医療事故予防のための分析結果を踏まえて、その収集が重要とされる。この種の情報収集は、どの程度個別患者との関係で明らかにされる必要があるのか検討される必要がある。他方、こうした事態を引き起こした医療関係者の情報の保護という観点は、医療事故やニアミスは基本的には発生させた者の問題と考える医療現場の土壌からこれまで余り考えられてきていないが、こうした情報を停滞なく集めるためにこの面での情報保護も重要な論点に上ってくることが認識された。さらに、患者にどの程度その内容を知らせるべきか、も重要な論点になりうる。医療事故情報に関するこれら3つの論点のうち、最後の問題については、英米法の議論を紹介する成果を得たほか、前二者の問題についても一定の知見が得られたと思われるため、その成果を現在執筆中の体系書に反映させる。以上の研究成果を踏まえ、医療情報の保護のあり方に関する制度設計について具体的な提案に結びつけてゆくのが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)