2005 Fiscal Year Annual Research Report
消費者に対する信用供与取引についての民事法的規律のあり方
Project/Area Number |
14520058
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山田 誠一 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60134433)
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Keywords | 利息制限法 / 貸金業規制法 / 期限の利益喪失条項 |
Research Abstract |
利息制限法1条1項は、超過制限利息の支払いは、法律上強制されることがないと定めている。そして、債務者による債権者に対する超過制限利息の支払いは、元本に充当され、元本の債務が弁済により消滅した後の利息の支払いは、不当利得として返還しなければならない(最判昭和43年11月13日)。 貸金業規制法43条は、債務者による債権者に対する任意の利息の支払いは、制限利息を超えるものであっても、有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めた。すなわち、債権者が貸金業者であり、利息の定めが出資法に違反せず(年率29.2パーセント以下であれば違反しない)、契約の内容を明らかにする書面、および、弁済を受けたとき弁済者に交付すべき書面を交付していれば、超過制限利息の支払があっても、その返還請求は認められない。 消費貸借契約において、分割払いの定めとともに、期限の利益喪失条項が定められていると、1回の支払いが遅滞した場合、残額全額についての期限の利益が喪失し、即時に全額を支払わなければならないこととなる。超過制限利息分を含めて、1回の利息の支払いが遅滞した場合には、元本の残額全額について期限の利益が喪失する旨の定めがなされることがある。しかし、このような期限の利益喪失条項は、超過制限利息の支払いを、債務者に対して事実上強制することになる。したがって、期限の利益喪失条項のうち、制限利息を超える利息の支払いが遅滞した場合に期限の利益が喪失する部分は、利息制限法1条1項の趣旨に反し、無効と解すべきである(最判平成18年1月13日、同平成18年1月19日、同平成18年1月24日)。 そして、このような無効な期限の利益喪失条項の存在により事実上強制された利息の支払いは、貸金業規制法43条が定める「任意の利息の支払い」に該当せず、したがって、その返還請求は、認められるべきである(上記の平成18年の3件の最高裁判決)。
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