2002 Fiscal Year Annual Research Report
家事事件処理の妥当性・実効性確保-実体規範と手続規範の融合的運用に関する研究-
Project/Area Number |
14520067
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
常岡 史子 帝塚山大学, 法政策学部, 教授 (50299145)
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Keywords | 人事訴訟手続法 / 財産分与 / 子の養育費 / 離婚訴訟 / 家事調停 / 親権者指定 / ドイツ離婚法 / 家庭裁判所調査官 |
Research Abstract |
法制審議会民事・人事訴訟法部会によって平成14年8月に公表された、人事訴訟手続法見直し等に関する要綱中間試案と、離婚の効果(主として夫婦財産の清算、離婚後扶養、未成年子の養育費)に関する従来の審判例・判例の分析を行い、離婚訴訟の家庭裁判所への移管による離婚の附帯申立事項の適切かつ迅速な処理につき、その実効性と問題点を検討した。婚姻関係の破綻が離婚事由の中で大きな比重を占めつつある現在、離婚事件の焦点は、離婚の成否そのものよりも、それに伴う財産分与や子の養育・監護に関する事項に移ってきている。したがって、移管により、これらの附帯的事項について家事調停委員会や家庭裁判所調査官の関与が手続的に保障されることは、離婚当事者や子のために望ましい解決を導く上で大きな前進であると確信する。ただし、離婚の効果に関する実体的裁判規範である民法は、財産分与や親権者指定の判断基準として白地的な一般的文言を置くにとどまるため、当事者自治を尊重し、家庭裁判所による個別的な対応を可能にするように思われる反面、関与する調停委員や審判官の視点の相違によって異なる結論に至る危険性を孕んでいることが、判例等の分析から見て取れる。 本年度は、日本法の検討と平行して、ドイツにおいて、離婚に伴う財産的給付および子の監護に関する資料の収集も行ったが、1970年代の離婚法改革によって、手続面の整備とともに実体的判断基準の具体化を実現したドイツでは、離婚訴訟の中で、離婚事件と離婚効果事件を包括的に処理するシステムが確立され、詳細な実体法規範がそれを支えているという印象が強い。次年度にかけてドイツの判例・学説をさらに検証し、離婚事件処理における実体規範と手続規範の融合的運用について、わが国への提言も含めて考察していく予定である。
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Research Products
(1 results)