2003 Fiscal Year Annual Research Report
雇用社会・労働市場の変化と雇用形態・労働条件・労働契約
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14520072
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三井 正信 広島大学, 法学部, 教授 (30229736)
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Keywords | 解雇 / 準解雇 / 雇用社会 / 労働市場 / リストラ / 成果主義賃金体系 / ワークシェアリング / 団体交渉と労使協議制 |
Research Abstract |
まず、公表業績から述べれば、「準解雇の法理(一)〜(四)」を執筆することによって、現在、リストラがらみで企業においてみられる、不当な圧力・退職誘導行為によって労働者が退職を余儀なくされる事態に対して、新たな観点から労働契約論を展開して規制法理を考察することで問題解決を試みるとともに、併せて使用者による解雇の本質を明らかにして解雇規制のあり方を考察した。また、「大内伸哉著『イタリアの労働と法 伝統と改革のハーモニー』」の書評を試みることによって、比較法的観点から労働法のあり方と新たなパラダイムを探る視点を探った。そして、『新現代労働法入門〔第2版〕』において「団体交渉と労使協議制」の法理を考察することで、多様化する現在のの雇用社会にふさわしい新たな労使のコミュニケーションのあり方と労使間のルール形成システムを構想した。なお、研究会等における成果発表としては、平成15年4月の広島民事法研究会において「準解雇の法理」を発表し、議論を行った。 次に、未だ公表していないが、本年度において次のテーマに着手し研究を進めた。(1)広く雇用も含めた社会的セーフティーネットのあり方を構想すべく生存権法理の再検討と新たな杜会保障法体系・労働法体系の再構築を試みた。特に、労働法については、新たなパラダイムの構築作業に入っている。(2)労使間の集団的ルールや集団的労働条件を形成する労働協約について、現在の変化する雇用社会に適合すべく新たな観点から法理構築を試みた。(3)解雇を含めた新たな労働契約終了法理を考察し、これからの雇用社会や労働者のキャリア展開の保障に適合した労働契約の終了のあり方を提示した。これについては、平成16年度に「準解雇の法理(五・完)」として公表すべく準備完了した。(4)変化する雇用形態や労働者のキャリア展開の保障の必要性を考慮して、新たな観点から就労請求権法理を構想した。これについても、準備が完了し平成16年度に「準解雇の法理(五・完)」として公表する予定である。 そして、聞き取り調査については次のものを行った。(1)現在、雇用社会の変化にともなって成果主義賃金体系の普及とワークシェアリングが注目を集めているが、これらを実施し成果を上げている三洋電機株式会社に聞き取り調査を実施し、今後の法整備のあり方と法制度設計の方向性を探った。併せて、労働条件の個別化にともなう紛争処理・紛争解決のあり方についても聞き取りを行った。(2)現在、雇用の流動化が進展して外部労働市場の整備が課題となるとともに、外部労働市場における人材ビジネスの重要性が高まってきているが、株式会社パソナに聞き取り調査を行うことによって、今後の外部労働市場のあり方及び人材ビジネスのこれからの展開方向を探った。(3)現在、企業の組織変動やリストラが社会問題化しているが、分社化、早期退職・希望退職の実施などによる大幅人員削減、出向者全員の転籍への切り替えなどを実施した住友金属工業株式会社に聞き取り調査を行い、それらをめぐる法的問題点を明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 三井正信: "準解雇の法理(一)"広島法学. 27巻1号. 53-85 (2003)
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[Publications] 三井正信: "準解雇の法理(二)"広島法学. 27巻2号. 111-136 (2003)
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[Publications] 三井正信: "準解雇の法理(三)"広島法学. 27巻3号. 1-33 (2004)
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[Publications] 三井正信: "準解雇の法理(四)"広島法学. 27巻4号. 31-64 (2004)
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[Publications] 三井正信: "書評 大内伸哉著『イタリアの労働と法 伝統と改革のハーモニー』"日本労働研究雑誌. 515号. 67-70 (2003)
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[Publications] 三井正信(分担執筆)ほか13名: "新現代労働法入門〔第2版〕(横井芳弘・角田邦重・脇田滋編)"法律文化社. 437 (2003)