2003 Fiscal Year Annual Research Report
行政-NPO関係の日本的特質と透明・対等・有効な協働関係のための諸条件
Project/Area Number |
14520093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
後 房雄 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20151855)
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Keywords | NPO / 公益法人 / 事業委託 / 協働 / 透明性 / 対等性 / 有効性 |
Research Abstract |
最近の日本において、行政と民間非営利団体(NPO)との関係の根本的な見直しが始まっている。社会的ニーズや利用者のニーズに柔軟に対応した良質のサービスの提供やコストの抑制のためには、民間団体の自立的な経営能力の確立が不可欠であるが、従来の日本における行政-NPO関係(特に公益法人などの場合)にはそれを妨げる多くの問題が存在していた。本研究は、アメリカ、イギリス、イタリアの事例と比較しながら行政-NPO関係の日本的特質を分析し、それが透明・対等・有効なものとなるための諸条件を明らかにしようとするものである。 平成14年度には、全国のNPO法人約6000団体に対する事業委託に関するアンケート調査を行ない、その結果を集計・分析し、平成15年7月に『事業委託におけるNPO-行政関係の実態と成熟への課題』と題する報告書を作成した。 平成15年度においては、従来の日本における行政-NPO関係の特質を明らかにするために、社会福祉法人、公益法人に対するヒアリング調査を継続した。 それと並行して、外国の事例との比較研究のために、14年度はアメリカの調査を行ない、15年度は、強制競争入札、ローカル・コンパクトなど行政-NPO関係において興味深い実験を行ってきたイギリスの調査を行う予定である(3月後半)。 これまでの研究によって、イギリスなどでも、行政からNPOへの事業委託が急増するなかで、NPOの独立性をどのように理解し、どのように確保するかという問題が議論の的となり、そのなかで政府とNPOとのコンパクト(協約)を締結することでルール化しようとする注目すべき動向も生まれていることが明らかになった。 その意味では、日本において、NPOへの事業委託が急増していることは、NPOが行政に依存的になり、公益法人の場合のような行政との依存的な関係を再現する危険を伴うことは否定できないとしても、同時に、透明・対等・有効な協働関係のモデルを構築する可能性を孕むものでもあると理解する必要がある。 そのための条件について、16年度はさらに研究を継続して初期の成果を挙げる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 後 房雄: "行政の任務"行政の新展開(福田耕治ほか編)(法律文化社). 89-120 (2002)
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[Publications] 後 房雄: "事業委託におけるNPO-行政関係の戦略論的考察"事業委託におけるNPO-行政関係の実態と成熟への課題(市民フォーラム21 NPOセンター). 1-40 (2003)
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[Publications] 後 房雄: "NPOは自治体を変えうるか"地方自治職員研修. 36巻8号. 11-12 (2003)
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[Publications] 後 房雄: "公共経営革命とNPOの台頭"分権社会の到来と非営利セクター(白石克孝編著)(日本評論社). (予定). (2004)