2002 Fiscal Year Annual Research Report
民族粉争に関する政治学的比較研究-その発生、激化・拡大、予防、解決-
Project/Area Number |
14520096
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
月村 太郎 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70163780)
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Keywords | 民族紛争 / エスニシティ |
Research Abstract |
4年間にまたがる研究の第一年目である平成14年度は、民族紛争の様々な事例に関する公刊資料の収集を中心に行った。研究計画調書にも記したように、民族紛争の事例は多岐に渡る。例えば、旧ソ連東欧地域である、旧ユーゴ(クロアチア、ボスニア、コソヴォ、マケドニア)、旧ソ連(タジキスタン、チェチェン、グルジア、ナゴルノ・カラバフ)、アジアでは、東ティモール、スリランカ、クルディスタン、アフガニスタン、アフリカのブルンジ・ルワンダ、ソマリア、コンゴ、更に西欧では、北アイルランド、バスクなどである。資料収集の途上であり、また各事例間に資料上の多寡がある為に、現段階で、確定的な分析結果を明らかにすることは不可能であるが、これまでに、暫定的とはいえ、民族紛争の発生、激化に関しては、以下のような知見を得ている。 第一に、民族紛争が発生・激化する際のリーダーの存在の重要性である。民族間関係において緊張状態、またその原因が存在するとしても、民族紛争の発生・激化には、それを組織化するアクターが必須である。リーダーなき場合には、民族間の散発的な衝突こそ生ずるかもしれないが、一定程度明確な紛争当事者間において一定期間継続することが定義の要件となる民族紛争は起こり得ない。 第二に、しかしながら、民族紛争の原因とリーダーが存在したとしても、常に民族紛争が生ずるとは限らない。リーダーのイニシアチブに基づいて民衆の間で支持を広めていく、中間的、媒介的なアクターの存在が必要である。その存在なくしては、リーダーは孤立し、紛争の、少なくとも激化という現象は起こりにくいと判断される。
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Research Products
(2 results)