2003 Fiscal Year Annual Research Report
丸山真男の思想・学問の展開過程の実証的研究―南原繁との交渉等を中心に―
Project/Area Number |
14520101
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
本田 逸夫 九州工業大学, 工学部, 教授 (30183940)
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Keywords | 丸山真男 / 南原繁 / 自由主義 / 福沢諭吉 |
Research Abstract |
丸山眞男の思想形成にとって、高校生時代の収監に端を発する、国家権力による受難の意味を見落すことができない。特に重要なのは、日本の「国体」が疑問の提出自体を神聖冒涜とする「否定をくぐらない」「対立を自己の内に孕まない直接的統一」であり、かつその権力が無際限に「精神の内面に土足で入りこ」む性向が体験された事実である。これらは、丸山の「懐疑のるつぼの中で鍛えられた」信条への元来の志向、及び近代西欧の「中性国家」の原則の、対極を成す特質であり、「国体」との(内外の知的な営為との関連で学問的に深められつつ遂行された)対決こそ、おそらく丸山の学問的的営為の根本的な動機であった。 丸山の「国体」との対決は、(「古層」論等に至る所の)日本思想の「存在拘束性」の徹底した追究=「自己批判」において一方で師、南原の学問の制約の指摘をも(より具体的には日清戦後世代論・福沢論等で)行ないつつ、同時に伝統や正統などの問題の探究が示す通り、結果としてはかえって超(むしろ長)歴史的な価値(=内面的個性・良心・正義等)の「客観的」存在を唱える南原の思想に大きく近づいたようにみえる。この軌跡の解明を、《啓蒙主義・自由主義の位置づけ》などの観点から今後、一層進めていく予定である。 尚以上に関連して、「神政政治」=「権威信仰」との南原繁の対決は丸山に深甚な影響を及ぼしたが、二人の思想的な交渉の把握には、「超リヴァイアサン」(宮田光雄)たる近代日本の国家主義の特徴に関して、思想史的に立入った検討.が必要である。本年3月に筆者の表した書評はこの検討に係わっている。
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Research Products
(1 results)