2004 Fiscal Year Annual Research Report
丸山真男の思想・学問の展開過程の実証的研究-南原繁等との交渉を中心に
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14520101
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Research Institution | Kyusyu Institute of Technology(K.I.T.) |
Principal Investigator |
本田 逸夫 九州工業大学, 工学部, 教授 (30183940)
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Keywords | 丸山真男 / 南原繁 / 自由主義 / 福沢諭吉 / キリスト教 |
Research Abstract |
当年度は、到達点の確認を込めて、「白由主義」論を手がかりに丸山の思想の形成展開の過程の把握を試み、大略下記の内容の学会報告等を行なった。 丸山は、「(政治的)自由主義」の特質を多様な意見に対する「寛容」に見出した。この「自由主義」は、丸山の青年期に「反動化」により窮地に陥ったが、当局の不寛容・異端排撃に対する日本の知識人の同調・屈服の傾向=「実践的無力」を、彼は重大視した。一方、「実証主義」的自由主義の批判者南原は、以上の知識人と鋭い対照を成して、「時潮と凄絶に対決」すると共に他者への寛容を示した。また、O・ウェルスの演説や一部のマルクス主義者と自由主義者の"共同戦線"等の例は、マルクス主義者らが無意識に依拠する「自由主義」的価値の重要性を明らかにした。こうして、外来思想の摂取のあり方との関連で、超歴史的確信と他者への寛容との結びつきというテーマを丸山は追求するに至る。 それは、規範創造的な自由と「見えない権威」との相即という自由観の問題と重なり、(相対主義の対極を成す、)キリスト教に淵源する「個性的人格」「良心」を含む、西洋思想の深層に存する「絶対的」価値の探求を指し示した。そして、戦後の「逆コース」時の論文等が示すように、丸山はその探求と関連して、日本知識人をも冒す、自由と寛容に敵対する根深い「無意識の論理」の抉剔と克服を追求した。そこに、「原型」論などの一連の作業の由来が存した。
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Research Products
(1 results)