2002 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の民主制定着と市民参加:2002年地方選と大統領選を事例に
Project/Area Number |
14520108
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
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Keywords | 韓国 / 民主化 / 市民参加 / 盧武鉉 / 選挙 / 政党 / 政治参加 |
Research Abstract |
本研究は、2002年に韓国で行われた2つの選挙(6月の統一地方選、12月の大統領選)を題材に、民主制定着期における参加の問題を考察することが課題である。初年度にあたる今年度は、選挙をめぐる政治過程のデータ収集と動向分析を中心に研究を実施した。選挙は、統一地方選挙が民主党の惨敗とハンナラ党の圧勝、大統領選挙が民主党の盧武鉉候補の当選という対照的な結果となった。メディアなどでは大統領選挙の変化を重視し、地域割拠政党システムの緩和、世代対立、若年層のインターネットを活用した政治参加という現象に焦点をあてている。しかし、「民主化宣言」後の政党政治の機能不全と市民参加の問題という長いスパンでの変化を視野に入れ、地方選への分析をも合わせて考察すると、大統領選挙の結果を別の角度から分析することが可能となる。 本研究ではこうした視角から、既成政党の部分では相反する結果となる地方選と大統領選を総合的に分析した。その結果、地方選における政治参加の動向が、大統領選における市民の政治活動や政党の対応、有権者の投票行動に大きな影響を与えている点が確認された。具体的には、地方選において、「非政治性」を揚げていた市民運動が政治活動を展開したこと、民主労働党が第三党として躍進したことなどが、党内政治力学を覆した盧武鉉の候補決定や大統領選の過程に大きく影響している。過去の地方選挙においては、中央政治の有力者の縁故地域は彼の党で固められる傾向が強かったが、2002年の選挙では、地方自治と市民参加の進展が地方選挙に変化をもたらし、それが大統領選に影響を及ぼしたことが確認される。ただし、今年度はデータ収集が中心となり、実証的分析は不足している。次年度には、より実証的に2つの選挙を分析し、既存の政党システムと政治参加の関係、中央-地方関係の観点から選挙過程を解明し、民主制定着期の政治参加の制度化という問題を考察する。
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