2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本型利益誘導型政治は、なぜ英国に存在しないのか?-公共事業をめぐる日英比較-
Project/Area Number |
14520118
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小堀 眞裕 立命館大学, 法学部, 助教授 (70253937)
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Keywords | 英国 / イギリス / 公共事業 |
Research Abstract |
今年度の科研費に基づく研究については、採択決定が11月で執行可能となった時期がさらに遅かったこともあり、和書・洋書の購入の手続きや英国への出張準備に追われることとなった。 とはいえ、2月に実施した英国出張において、研究者や行政関係者に対して行ったインタビューでは、日本の行政改革や公共事業をめぐる構造とは異なったユニークな主張を聞くことができた。 また、英国の世論調査データBritish Election Studiesを検討する過程で、英国の選挙においては、小選挙区制であるにもかかわらず、「人」を選ぶ志向が有権者の中で極めて低く、まずこの点で、日本におけるような地元利益にとって有力な政治家個人を求める傾向が強くないことが確認できた。日本における投票行動の先行研究を検討した結果では、投票行動の公共事業志向は、地元の有力政治家への支持と結びつく傾向があることが確認できた。さらに、英国の地方財政の構造においては、1980年代までは地方自治体に課税自主権が比較的認められており、地方自治体は中央政府の方針に抗してまで税率を引き上げることがあったこと、また、その際の地方税としては、日本とは異なり資産課税の方式を取っていたため、労働者の多い地域(多くは労働党支配の自治体)では地方自治体が労働者の反論なしに税率を上げやすかったことなどが、先行研究の検討の結果、わかった。一方、日本の場合は、地方税率・新税の創設、地方債の発行などの自由が地方自治体に認められておらず、それだけに、それらの許可を求める中央政治家や官僚に対するロビー活動が重要な意味を持っていることが確認できた。
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