2004 Fiscal Year Annual Research Report
市場移行諸国におけるコーポレート・ガバナンスシステムの変動と国際比較研究
Project/Area Number |
14530008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
溝端 佐登史 京都大学, 経済研究所, 教授 (30239264)
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Keywords | 社会的責任 / rent-seeking / コーポレート・ガバナンス / 民営化 / 経路依存性 / 取引コスト / インセンティブ / ステークホルダー |
Research Abstract |
市場移行諸国とりわけロシアにおけるコーポレート・ガバナンスの変動を明らかにするうえで、本年度、第1に企業経営におけるもっとも新しい論点である企業の社会的責任経営を検討した。この課題はEU東方拡大の影響を受けて、また企業の多国籍化の影響を受けて、市場移行諸国全体に浸透しており、地域社会・ステークホルダーに強く影響する。実証研究により、企業の意思決定において、企業内部のステークホルダーの利害が強く作用していること、社会的責任経営は経路依存的に進化しており、インフォーマル制度も作用していることを実証的に明らかにした。本成果の一部は、「市場経済化と民主主義」の論題で、名古屋大学法整備支援研究会(2005年1月)で公表している。第2に、ロシア企業の経営者を対象とした、大規模な聞き取り調査、アンケート調査を実施した(2004年8月、11月)。わが国では、まとまったオリジナルの聞き取り調査は存しない。今回の聞き取りは、ロシアにおける市場の制度構築において正常化の過程が進行している状況において、所有・支配・経営にかんしてわが国では初めて実施された総合的な調査であると自負している。本調査資料は英語・ロシア語で綿密に準備され、60項目ほどにもなる大部で実施・回収されている。現在、調査結果の解析途上にあり、その一部は国際学会で公表する予定である。第3に、こうした成果をもとに、ロシアのコーポレート・ガバナンスの独自性とそれに対するEU東方拡大のインパクト、「コーポレート・ロシア」(ロシア企業社会の動態)を検討した。本研究は、2004年6月モスクワ大学経済学部200周年記念国際会議で発表するとともに、日本語原稿として公表している。本研究の意義は、ガバナンスの国際比較において、組織・制度研究およびそこでのステークホルダーの行動分析が重要であること、インフォーマル制度が安定的に作動する条件と主体的選択が存していることを解明している点にある。本研究課題は、市揚経済移行における制度・組織の構築に関わり、京都大学21世紀COEワークショップにおいて2004年5月、7月に報告している。
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Research Products
(17 results)