2002 Fiscal Year Annual Research Report
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14530013
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
柳澤 哲哉 埼玉大学, 経済学部, 助教授 (90239806)
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Keywords | マルサス / 人口論 / ジャーナル分析 / 新マルサス主義 / ブラックウッズ・マガジン / ウェストミンスター・レヴュー / エジンバラ・レヴュー / 言説分析 |
Research Abstract |
1 『ブラックウッズ・マガジン』におけるマルサス人口論については、以下のことが明らかにできた。『ブラックウッズ・マガジン』では、ケインズ経済学の先駆とも言える、トーリー・マクロ・エコノミクスが展開されていた。そこでは、過剰人口が需要不足による失業者として把握されており、救貧給付がもたらす消費需要によって雇用増加を図る政策が提言されていた。こうした議論の背景には、人口論の賃金基金説的なバージョンとは、完全に対極的な人口論が存在することになる。すなわち、人口増加を上回る供給能力の前提、消費需要による生産増加という因果関係の重視である。こうした反マルサス的な人口論は、ナポレオン戦争期に登場したウェイランドら人口優位説を経済学的に洗練させたものと位置づけることができる。この潮流は市場への政治的介入の必要を説く、ハイ・トーリーの立場と整合的で、人道主義者サドラーなどにも見いだすことができる。成果は経済学史学会関東部会で発表した。現在、埼玉大学経済学部紀要に投稿中である。 2 『エジンバラ・レヴュー』と『ウェストミンスター・レヴュー』については、両者の中に賃金基金説的バージョンの人口論が存在することが確認できた。前者ではマルサス人口論が古典派経済学的な枠組から重視されているのに対して、後者では実質的に人口論が重視されていないという特色がある。後者の背景には新マルサス主義の容認があると考えられる。この論点を補足するものとして、フランシス・プレイスによるマルサス人口論の両面的な解釈を検討した。
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