2002 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済へのシステム移行の論理――ロシアの現状から――
Project/Area Number |
14530017
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
岡田 和彦 高崎経済大学, 経済学部, 助教授 (20315691)
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Keywords | 移行経済 / 市場経済 / 不均等発展 / 多様性 / 進化 |
Research Abstract |
旧ソ連・東欧諸国の市場経済への移行過程は、不安定な国民経済のもとでの経済政策の紆余曲折や各国経済間および国民経済内部での経済格差の拡大に象徴されるように、厳しい状況を呈している。それを受けて、移行経済に関する従来の研究の相当部分が、自らの価値観に則して移行・市場化政策の是非を一方的に主張する、ともすれば主観的な方向にある。その際、両者は市場認識において共通しており、移行は基本的には成功したとする者も失敗したとする者も、さらなる市場化により諸問題は解決すると期待している。市場経済による人々のより自由で豊かな生活の実現を、予定調和的に想定しているわけである。 この一年間の実証的および理論的研究により、私は、市場移行はうまくいった、そしてその結果が人々の間および地域間での経済格差の拡大なのであり、それこそが市場経済に特有な、多様な進化と不均等発展という現実のありようなのだという結論に辿り着いた。そしてこの認識により、市場経済の性質を、人間にとって肯定的な面をも否定的な面をもより客観的に明らかにし、将来における経済システムと社会との関係のありかたを考える道筋をつけることが可能になったと思われる。 この一年、実家の姉の脳血栓による右半身不随と心臓手術、看病疲れの母の二度の入院、そして私自身の胃潰瘍発症により、私の研究生活は大きく制限され、予定していたロシアでの現地調査もできず、研究成果はきわめて限られたものとなった。けれども、岩波書店「経済事典」(2004年3月刊行予定)で分担執筆し、一本の論文を書き上げたことにより、これからの研究の方向性を確定できた。今後、いっそうの研鑚に努めるであろう。
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Research Products
(2 results)