2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境会計ディスクロージャーの経済政策-制度化に向けた実証研究-
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14530052
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
須田 一幸 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (00171273)
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Keywords | 環境会計ディスクロージャー / 実証研究 / 証券投資意思決定 / 環境負債 / 制度会計 / 財務会計 / 環境会計 / 意思決定支援機能 |
Research Abstract |
「環境ディスクロージャーの経済政策-制度化に向けた実証研究-」は3年をかけて研究する予定の課題であるが、本年度は、(1)先行研究を分析する、(2)それに基づいて分析手法を検討する、(3)分析に必要なデータベースを構築する、という作業を実施した。(1)と(2)の成果が、環境会計情報と証券投資意思決定」として日本社会関連会計学会の『社会関連会計研究』に掲載された。米国の実証研究によれば、環境会計情報は証券投資意思決定に活用され、その不確実性を含めて株価に大きな影響を与えている。そして環境会計の意思決定支援機能を与件として、経営者は環境会計を戦略的に実施する。たとえば、環境負債の戦略的過小評価が行われたことが示されている。しかし、戦略的過小評価の効果は証券市場で観察されず、逆に、環境会計情報の積極的開示が環境問題の発生時に株価の下落幅を小さくするという証拠が得られている。環境負債の会計に固有の不確実性が伴うことは避けられず、不確実性が高い場合ほど、環境負債によるマイナスの株価効果は大きい、ということがわかった。しかし米国の実証研究によれば、環境負債に関する内部情報の開示により不確実性を減少させ、もって株価に対するマイナスの影響を緩和することができるのである。このように米国では、制度会計としての環境会計が意思決定支援機能を適切に果たし、他の財務会計情報と相挨って、機能改善の乗数効果を発揮している。わが国の財務会計について意思決定支援機能の改善を求めるのならば、制度会計としての環境会計の構築が不可欠だ、といえよう。次年度以降で上記のような米国の実証研究の成果を踏まえて、我が国企業について実証研究するため、現在、データ・ベースを構築中である。
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Research Products
(1 results)