2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530074
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻 義昌 早稲田大学, 社会科学部, 教授 (30103617)
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Keywords | ロシア / 雇用形態 / 不安定就業 / 請負労働 |
Research Abstract |
平成14年6月13日から30日までモスクワとペテルブルグにて資料収集とインタビューを行った。資料は従来から刊行されていた定期刊行物以外に入手できたものはなく、モスクワ市とペテルブルグ市の両統計局とから労働統計および家計調査について新刊資料を入手したにとどまる。モスクワでは科学アカデミー経済学研究所、労働省マクロ経済研究所、労働省労働研究所、モスクワ大学経済学部雇用問題講座(専修)で最近の労働事情について意見の交換を行った。そこでは、労働賃金の水準が98年9月の経済崩壊以前の水準を越えたこと,賃金未払い問題、現金不足による賃金の現物支払いなどソ連崩壊以降続いていた異常現象が消えつつあることなど、国家統計委員会レベルの統計情報で知ることが出来る事実についてほぼ間違いないという感触を得た。しかしながら、民間部門,とりわけ小規模小売業で見られる請負的雇用契約の実態についてどんな調査があったかについては残念ながらまったく情報が得られなかった。 平成14年12月17日から翌年1月10日までのロシア滞在では,両都市の統計局での資料収集のほかはモスクワ大学への訪問に留まった。 過去1年にロシアにおいて重要な案件は雇用問題に関する限り,平成13年改正のロシア連邦労働法典の施行をめぐる問題であった。新法典では柔軟で多様な雇用形態が容認されているためか、不安定就業に起因する労働紛争の規模について情報を得ることが出来なかった。そもそも労働紛争そのものがモスクワおよびペテルブルグではほとんど存在していない(モスクワではストライキ件数がゼロの月がある)かのようであり、異常な雇用契約の存在について社会的関心を集めることがなくなっている。しかしながら、不安定就業および請負労働(単純出来高払いも含む)がますます一般的となり,労働者の大部分が労働法による保護の外に置かれているかもしれないという仮説の検定がいまほど重要性を帯びていることは部分的、散発的なデータなしに言える。
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